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社説・コラム

社説 民進党代表に蓮舫氏 「土俵際」の自覚を持て

 民進党はきのうの党首選で、参院議員の蓮舫氏を新代表に選出した。

 高い知名度と発信力、歯に衣(きぬ)着せぬ弁舌が低迷する党勢回復に欠かせないと国会議員や党員・サポーターらに受け止められたことが圧勝した要因だろう。

 だが選挙中に二重国籍問題が指摘されるなど、もやもや感は残った。当選後の記者会見では「国民に選択してもらえる政党に」と述べたが、言葉通りになるには前途多難であることを肝に銘じ、党再生のビジョンを構築する必要がある。

 そもそも民進党は「土俵際」といっていい。旧民主党政権で失った国民の信頼は戻らず、最近の各種世論調査では支持率は10%前後に低迷したままだ。「自民1強」が際立つ中、再びの政権交代を目指す針路を明確にできていない。さまざまな問題で党内の路線対立も残る。

 なのに今回の党首選でも、肝心の政策論争が深まらなかったことは残念である。26日には環太平洋連携協定(TPP)承認案が最大の焦点となる臨時国会が召集され、早速野党第1党の党首としての力量が試される。

 民意の受け皿となり得る安倍政権との対立軸をどう築くか。国民の率直な思いからすれば、何より経済政策だろう。

 7月の参院選の結果を見てもアベノミクスに一定の信任があることは確かだ。民進党は単に「失敗だ」と批判するだけでなく国民の信頼に値する経済政策を示すことが求められよう。

 「安心の好循環社会」。蓮舫氏が掲げるスローガンである。子どもの貧困対策や非正規雇用の廃止などを挙げるが、具体的プロセスや財源をまだ示していないのは物足りない。経済成長ありきの現政権とは異なる社会のありようをこの際、早急に模索してもらいたい。

 党内対立から「弱点」とされる安全保障政策の議論を避けることも許されない。安全保障関連法成立からまもなく1年を迎える。なし崩し的に既成事実化する動きにどう対峙(たいじ)するか。北朝鮮の核実験や中国の海洋進出など緊迫化するアジア情勢とどう向き合うかも重要だ。

 一方で、改憲勢力が3分の2を超えたことで転機を迎えた憲法改正の議論については慎重な姿勢が要るのではないか。党首選では候補者3人がいずれも改憲の議論自体は前向きだった。しかし他の重要課題を差し置いてまで優先すべきだとどれほどの国民が思っているだろうか。

 要するに国民に寄り添い、そのニーズを十分にくみ取る骨太な政策を少なくとも次の衆院選までに示せるかだ。

 共産党などとの野党共闘を巡っても議論が集中したが、まずは政策ありきのはずだ。巨大与党に対抗する戦術としては否定しないが、二大政党の一翼を担うためには党単独で議席を伸ばすことが本来の姿だろう。

 党への根強い不信感を拭うにも蓮舫氏自身が説明責任を果たすのは当然だ。二重国籍問題で釈明が二転三転したのは政治家としてやはり問題といえる。

 国籍法は「外国の国籍の離脱に努めなければならない」としている。台湾籍を残していた点は不適切な状態が長年続いたことになり、脇が甘いと言わざるを得ない。他党からも突かれるのは必至だろう。逃げることなく誠実に説明してほしい。

(2016年9月16日朝刊掲載)

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