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社説・コラム

社説 辺野古訴訟で県敗訴 協議で解決策見いだせ

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の返還を巡り、国と沖縄県が争った訴訟で初めてとなる司法判断が下された。

 福岡高裁那覇支部は普天間の危険性の除去には移設先の名護市辺野古沖の埋め立て以外にないとして、翁長雄志(おなが・たけし)知事が埋め立て承認の取り消し処分を撤回しないのは違法と断じた。

 だが釈然としない。これで対立の構図が解消に向かうとは考えにくいからだ。

 政府と沖縄にいったん矛を収めさせた2月の和解勧告では、同じ裁判長がこう指摘していたはずである。「延々と法廷闘争が続く」可能性に触れて、国が「勝ち続ける保証はない」と。そして「オールジャパンで最善の解決策を合意し、米国に協力を求めるべきである」と国の方に譲歩を求めていた。

 「辺野古移設が唯一の解決策」というこだわりを国の側が捨てなければ、決着はない。そうも読み取れた勧告は一体どこにいったのか。きのうの判決は明らかに国の言い分に沿っている。すぐ上告することを表明した翁長知事は裏切られた思いなのだろう。「あまりにも偏った判断」と批判し、裁判所についても「政府の追認機関」と強くなじった。

 むろん最高裁に進んでも、年内に想定される最終的な司法判断で沖縄側の意向が通る保証はない。そこで何より問題となるのは和解条項である。双方とも確定判決に従うという確約を、どう考えるか。

 仮にこのまま県敗訴が確定した場合、政府は辺野古移設に全面的に協力することを当然、求めてこよう。

 しかし知事の考え方は違う。今回の訴訟は、あくまで行政手続きの一つとしての埋め立て承認取り消しの是非に関するものであり、辺野古移設自体を容認したことにはならない、という論理に立つからである。

 国が埋め立て工事を再開する場合、想定される岩礁破砕許可の更新申請にしても、工法や設計の変更申請にしても許認可権限は県にある。工事を阻むため県側はあらゆる権限を使い、徹底抗戦を続ける構えを見せる。

 このままなら両者の対立が延々と続くことになる。それが好ましいはずはない。

 やはり優先すべきは沖縄の意思である。強制接収で奪われた土地に造られた普天間飛行場の無条件返還を求めるのは当然という思いが県民の間に根強い。普天間の県外移設を望む民意は自民党の現職閣僚を落選させた7月の参院選でも明らかだ。

 いま一度、「和解」の原点に立ち返るべきではないか。円満解決に至る道は双方の協議をもって切り開く以外にない。稲田朋美防衛相も判決後、協議を継続する考えを述べている。

 これまでの国の対応では地元の反発を招くだけだ。

 沖縄の基地問題はもう一つ重大な局面にある。米軍専用施設「北部訓練場」の部分返還に向けたヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の建設である。安全性に疑問が残る垂直離着陸輸送機オスプレイ配備によって、かえって基地の強化につながるとして、激しい抗議行動が続く。政府は自衛隊まで工事に動員して強引に押し切る構えだ。

 信頼関係を築き直す努力をしつつ、解決策を見いだす必要がある。辺野古以外の選択肢も含めて知恵を絞るべきである。

(2016年9月17日朝刊掲載)

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