×

ニュース

重なる71年前の記憶 ヒロシマ・アート・ドキュメント 国内外から写真や映像

 国内外のアーティストを被爆地へ迎え、現代美術を発信する「ヒロシマ・アート・ドキュメント2016」が、広島市中区の旧日本銀行広島支店で開かれている。23回目を迎えた今年は、3カ国から3人と1組が参加。71年前の記憶を現代社会に引き寄せた多彩な表現が、見る者に思考を促す。

 ロンドンを拠点に活動するピーター・ニューマンは、広島の爆心地近くの風景を魚眼レンズで撮り続け、アニメーションと写真作品に仕上げた。晴れた空を見上げる構図は、あの日、きのこ雲の下にいた人々の視点にも、悲劇を乗り越えて上を向いた被爆者の姿にも重なり、想像をかき立てる。

 パリ在住のセシール・アートマン「パーティション&ロス」は、モノクロ写真のスライドショー。一見、砂漠か浜辺に作られた砂の造形のようだが、スタジオで小麦粉を使って「小宇宙」を作り、撮影したのだという。粉が生むさまざまな表情は、画面が切り替わるたび、被爆で焼かれた人肌に見えたり、核実験場や軍事基地に見えたり、月面のようにも見えてくる。

 同じくパリのジュスティーヌ・エマ「生まれ変わる」は、日本の科学技術とアニミズム(精霊信仰)をテーマに映像インスタレーションを出展。日本の2人組、演出家の相模友士郎とダンサーの佐藤健大郎は、ダンスパフォーマンス「ナビゲーションズ」を初日のオープニングで上演した。会期中は、その様子を伝える映像を流している。

 クリエイティヴ・ユニオン・ヒロシマ(伊藤由紀子代表)の主催で28日まで。無料=敬称略。(森田裕美)

(2016年9月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ