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脱原発どこへ/仕方ない 市民の賛否交錯 大飯再稼働

 「福島の事故の検証が先」「電力需給を考えると仕方ない」―。政府による関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働の決定を受け、中国地方では16日、市民に賛否の声が入り交じった。経済界などは再稼働に理解を示した。

市民

 「政府は昨年『脱原発』を打ち出したばかりなのに」と、首をかしげるのは広島市西区の岡賢二さん(77)。安佐南区の大学助手成清仁士さん(31)も「国民が意識を変えれば原発に頼らない生活は可能」と再稼働に反対した。

 福島第1原発の事故原因が未解明なままの判断。福島県南相馬市から南区に避難している衣山弘人さん(54)は「事故があると、福島のように地元に住めなくなるのに」と憤る。

 一方、安佐南区の主婦家室恵梨佳さん(25)は「安全性が確認できれば再稼働は問題ない」と考える。「2歳の息子がおり、エアコンを控えてまでの節電に抵抗がある」。福山市のトラック運転手小杉恭正さん(40)も「地域経済のために稼働は仕方がない」と語った。

 中国電力島根原発がある松江市の主婦伊藤笑子さん(67)は「避難計画や手段を十分考えてほしい」。同原発から30キロ圏内に入る出雲市の中岡幸正さん(64)は「再稼働には周辺自治体の意見も反映する仕組みを」と求めた。

 上関原発の建設計画がある山口県上関町では、原電推進議員会会長の右田勝町議(70)が「上関原発計画も再開されるのでは」と期待。反対派で上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(57)は「福島の教訓が全く生かされていない」と語気を強めた。

自治体・経済界

 島根県の溝口善兵衛知事は、再稼働の必要性を強調した野田佳彦首相の姿勢などに触れ「国や福井県が、地元や周辺自治体とのやりとりなど難しいプロセスを経て出した結論だ」と理解を示した。

 松江市の松浦正敬市長も理解を示しつつ「国は(原発事故の)調査の結論を踏まえた安全対策や基準を示す必要がある」とした。

 中国地方は今夏、節電により関西地方に電力を送る。広島経済同友会の高木一之筆頭代表幹事は「中国地方にも好影響が期待できる」と歓迎。山口県中小企業家同友会の渋瀬清治代表理事は「年数を限って動かし、脱原発を進めるべきだ」との考えを示した。

 中国電力は「国内の電力需給が厳しいことに変わりはなく、引き続き安定供給に最大限取り組む。島根原子力の再稼働は安全の確保が大前提で、地元の理解を得られるよう努力する」と話す。上関原発については「必要な電源で、広く理解をいただけるよう取り組む」としている。

原発再稼働反対集会やデモ 広島で市民団体

 関西電力大飯原発3、4号機の再稼働が決まった16日、反原発や反核を掲げる広島県内の12団体が広島市中心部で抗議の集会やデモ行進をした。約80人が参加した。

 集会は中区の原爆ドーム前で午後1時にスタート。呼び掛け人の市民団体「変えよう!被曝(ひばく)なき世界へ 市民アライアンス」の森本道人副代表(28)が「事故が起きれば取り返しがつかない。黙っていれば容認することになる」と訴えた。

 続いて参加者は本通り商店街や周辺の約1・5キロを約1時間かけて行進した。「再稼働やめろ」「子どもを守れ」などと書かれたプラカードを持って買い物客にアピールし、抗議のビラも配った。

(2012年6月17日朝刊掲載)

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