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社説・コラム

天風録 「メラビアンの法則」

 言葉の中身より見た目が大切―。はやりのスピーチの手ほどきの基は、米心理学者メラビアンが半世紀前に唱えた法則とされる。言葉が与える影響はたった7%。声のトーンが38%、表情など見た目の印象が55%に及ぶという▲この7・38・55の法則を、米国のテレビ討論で対決した2人も意識していたのかもしれない。民主党のクリントン氏は強さがにじむ赤いスーツで悠然とほほ笑み、共和党のトランプ氏は青ネクタイで冷静さをPRした▲実のところ討論をリードしたのは、明らかにクリントン氏だ。主要メディアは「優勢」と伝えたものの、ネットや専門家の評価は分かれた。トランプ氏も思ったほど常識外れではないと、点数を稼いだというから不思議だ▲きのうテレビに大きく映った日本の政治家2人は、どう採点されたのか。東京都知事の小池百合子氏と、民進党代表の蓮舫氏。ともに女性で初のポストに就き、演説する姿は力強かった▲「都民ファースト」に「選択される党になる」。決めぜりふの真価は行動が伴ってこそだろう。「メラビアンの法則」も本来、感情がうまく伝わるかどうかの目安にすぎない。洋の東西を問わず見た目だけでは済まない。

(2016年9月29日朝刊掲載)

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