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折り鶴を活用 三次で灯籠に

 原爆の子の像(広島市中区)に寄せられた折り鶴活用策の一環として、広島市による第1号の無料配布先となった三次市で、お年寄りたちが平和を願う灯籠に再生する作業を続けている。完成すれば、三次市が三良坂町の三良坂平和公園で8月5日に開く「平和のつどい」で披露する。(重田広志)

 折り鶴を灯籠に再生するアイデアは、三良坂平和公園内にある三良坂平和美術館の元泉園子館長(54)たちが思い付いた。1月に三次市を通じて広島市に打診。5月に約2万6千羽(約22キロ)を譲り受けた。

 平和美術館は、三次市内の高齢者福祉施設15カ所に2千~3千羽ずつ分配。お年寄りたちは手先の運動も兼ねて、鶴を1羽ずつ1枚の紙に開いた。その紙をちぎって、灯籠の側面となる模造紙に貼り付けている。6月末までに、灯籠約800個を完成させる予定だ。

 美術館近くのデイサービスセンターみらさかでは、約40人が作業。赤色の折り紙で「絆」の文字を作っていた佐々木巧さん(91)は「人と人とが強い絆で結ばれることが平和の意味。微力ながら、絆の大切さを発信したい」と話す。

 出来上がった灯籠は、まず7月21日から8月26日まで美術館内に展示。平和のつどいでは、中に明かりをともして公園に並べる。さらに1年後のつどいで、焚(た)き上げて供養する計画という。

 元泉館長は「広島市の折り鶴を活用することで、平和発信の説得力が一層増しそうだ。活用策のモデルの一つになれば幸い」と力を込める。

折り鶴活用の現状

1カ月半 申請18件

海外を含め62万羽送る

 広島市が折り鶴を配布したのは、5月に申請受け付けを始めて1カ月半で18件に達した。個人4人と、学校やグループなど14団体と配布先はさまざま。広島県内はもちろん、県外、海外とも2件ずつあり、合わせて約62万羽(約528キロ)を送った。関心の高さがうかがえる。

 自治体は第1号の三次市だけだが、学校は緑井小(広島市安佐南区)、なぎさ公園小(佐伯区)、長束中(安佐南区)、観音高(西区)の4校。折り鶴を使って平和のオブジェやアート作品、「絆」という文字をつくり、平和の集いなどで展示するという。

 活用法で目立ったのは、国内外の平和行事での展示。中には、店舗兼自宅の一室を改装し「平和の祈りの部屋」として一般公開するアイデアもあった。

 海外の2件は英国とカナダ。若者に核兵器廃絶の必要性を訴えるため、6月から年末まで音楽祭や大学の催しなどで飾る(英国)。トロント市で30年来続くヒロシマ・ナガサキの追悼行事や写真展の会場に展示し、来賓に贈呈。市内の学校にも贈り展示してもらう計画(カナダ)。

 市平和推進課の石田芳文被爆体験継承担当課長は「多くの反響があった。趣旨を理解して平和の思いを共有し、広く発信してもらっている。さらに輪を広げたい」と話している。(宮崎智三)

≪配布先が計画した折り鶴の活用法の例≫

○世界詩人大会で、核兵器廃絶と世界恒久平和を願うメッセージとして贈呈
○岩手県陸前高田市の津波被災者に震災復興のメッセージを添えて寄贈
○壁画を作成し、グループホームに展示
○インドで開催する原爆写真展の来場者に平和のメッセージを添えて配布
○世界平和祈願の日に展示する。国際女性キャンプでのアート創作活動にも使う

 広島市は5月1日から折り鶴提供の申請を受け付けている。原則1袋(約1万3千羽、約11キロ)単位で、上限はなく、送料は市が負担。希望者は、所定の申請書に実施計画書などを添えて郵送か電子メールで申し込む。申請書は市役所、区役所で受け取るか、市のホームページからダウンロードする。市平和推進課Tel082(242)7831。

(2012年6月18日朝刊掲載)

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