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被爆体験記集を発行へ 旧友の証言活動契機

 広島市中区の舟入高を1957年に卒業した同級生男女9人が、被爆体験の手記集を作っている。9人は原爆投下時、国民学校1年生で、このうち8人が別々の場所で被爆した。いずれも初めて体験を明かし、しまい込んでいたあの日の記憶と向き合った。

 9人は広島、尾道市に住む73、74歳。被爆者の8人は、全身を焼かれた母をみとった悲しみや病気との闘い、戦後の生活苦などをつづった。疎開先で被爆を免れた有田邦子さん(73)=中区=は編集を担当した。

 旧友が米国で被爆証言をしたのを知った有田さんが昨年9月、「記憶を風化させてはいけない」と手記集作りを同級生に提案。8人が応じた。中には互いに被爆したことを知らなかったメンバーもいた。執筆が苦手な人の体験は他のメンバーが聞き取って代筆し、励まし合いながら手記を書き進めてきた。

 中区の舟入国民学校(現舟入小)で被爆した江上弘子さん(73)=佐伯区=は当時の記憶をたどると体調が悪くなり、家族にもほとんど話してこなかった。「仲間がいたから乗り切れた」と話す。

 手記集は今夏にも仕上げ、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(中区)に贈る。安佐南区の祇園国民学校(現祇園小)で被爆した高瀬敏彦さん(73)=安佐南区=は「手記から平和の大切さを感じてほしい」と願っていた。(田中美千子)

(2012年6月18日朝刊掲載)

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