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免許延長判断 論戦の柱 上関埋め立て 山口県議会定例会

 中国電力が上関町で計画する上関原発建設で申請した海を埋め立てる免許延長を許可した村岡嗣政知事の判断が、開会中の山口県議会定例会で論戦の柱となっている。29日までに代表・一般質問をした県議15人のうち、6割の9人が県の姿勢をただした。最大会派の自民党が原子力政策の推進を国に求める意見書案を提出したのに対し、上関原発建設に反対する県議たちが同日、集会を開いて可決阻止を訴えるなど、県議同士のつばぜり合いも激しくなっている。(佐藤正明、村田拓也)

質問者の6割 県姿勢問う

 「原発の賛否を理由に免許延長を許可、不許可にすることは、公有水面埋立法では違法な処分になってしまい、できない」。村岡知事は27日、上関原発に反対する県議の「知事の考えはおかしい」との指摘に、強く反論した。

 県は、埋立法に基づき免許延長の是非を判断する要件として①期間内に工事を完成できなかった合理的な理由がある②埋め立てを続ける十分な理由がある―の2項目を挙げる。反対派の県議は「2項目とも正当な理由はない」などと追及した。

 ①について、中電は県に「埋め立て工事を始めて以来、断続的に第三者が立ち入り、作業を見合わせるなどした。福島第1原発事故を受けて中断した」と説明。前田陽一土木建築部長は「福島の事故があった中での工事強行は、決していいことではない」として、正当な理由と評価した。

 中電が免許延長を申請したのは2012年10月。村岡知事がことし8月3日に延長を許可するまで、県と中電は計7度、文書でのやりとりを繰り返した。当初は回答期限が短期間に設定されたが、13年3月の5度目以降は約1年後と大幅に延びた。

 この過程を巡り、専門家からは「県が可否判断を先延ばしたのは明らかだ」との指摘も出る。前田部長は「中電が回答するには相当な情報の掌握、整理が必要で、ある程度の期間が必要と考えた」と説明した。

 許可と同時に、村岡知事は「原発本体の着工時期の見通しがつくまでは埋め立て工事をしない」よう中電に求めた。阿野徹生商工労働部長は「どういう状況になれば、発電所本体の着工時期の見通しがついたといえるのかは、具体的に想定していない」と明かした。

原子力推進求める意見書案 山口県議つばぜり合い激化

 山口県知事の村岡知事による免許延長許可を受けて、最大会派の自民党など4会派は、原子力政策の推進を国に求める意見書案を提出した。上関原発について「重要電源開発地点に指定されている」と明記しているが、上関原発そのものの建設を求める文言は含まれていない。

 自民党幹部は「今回の延長許可で、上関原発を建設できるかどうかは国に委ねられた。原発新増設へ、きちんとした方針を示してほしいということだ」と説明する。全議員の8割に当たる6会派37人が賛成の意向を示す。

 これに対し県議7人は、上関原発に反対する支援者たち約50人を集めた集会を、県議会棟で開いた。「意見書案には、安倍晋三首相の下で上関原発建設の道を開きたいとの思惑がある。何としても否決しよう」などと主張し、反対の世論を盛り上げるよう訴えた。

 7人は4会派に分かれているが、うち2人が所属する民進・連合の会は、意見書案への賛否で会派内が割れている。自民党に文言の修正を求める動きもあり、足並みの乱れも見られる。

(2016年9月30日朝刊掲載)

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