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カザフTV局 ヒロシマ取材 核被害の番組制作

 旧ソ連時代に核実験が繰り返され、被曝(ひばく)者の多いカザフスタンから、国営テレビ局のスタッフがヒロシマ取材に訪れた。ナガサキ、フクシマ取材なども行い、核による被害者のドキュメンタリー番組を制作する。

 プロデューサーのフィルダス・ヴァリアクメトフさん(37)らスタッフと、通訳を兼ねた在日大使館の書記官の5人が今月初旬、広島市を訪問。原爆資料館(中区)を見学し、前田耕一郎館長や平岡敬元市長、カザフへの医療支援を続ける市民グループの中心メンバーにインタビューした。

 被爆者の内海昭子さん(82)=東区=と川崎巳代治さん(83)=西区=には、被爆した状況などを質問。平岡元市長には、福島第1原発事故後の今、原子力の平和利用についてどう考えるかなどについて聞いていた。

 ヴァリアクメトフさんは、旧ソ連最大のセミパラチンスク核実験場の周辺などで、友人を含めて体調悪化を訴える被曝者が多いと指摘。「技術大国となった被爆国日本がなぜ、原発による核被害も受けたのか。今後、核による被害が広がらないようにしたい」と番組制作の狙いを話していた。

 スタッフは、モスクワやウィーン、ニューヨークでも取材を重ね、7月に番組を放映する予定という。(宮崎智三)

セミパラチンスク核実験場
 旧ソ連最大の核実験場で、面積は四国とほぼ同じ約1万8500平方キロ。1949年8月29日、プルトニウム爆弾を使い、旧ソ連が初の核実験を実施。89年10月まで450回以上の核実験が繰り返された。うち100回以上は、空中や地上で行われたため、放射性物質が広く拡散、がんや異常出産が相次ぐなど被害が深刻化した。カザフスタン政府によると、影響を受けた人は100万人以上で、今も健康被害に苦しんでいる人が多いという。

(2012年6月18日朝刊掲載)

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