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連載・特集

「この世界の片隅に」展から <4> 「昭和8年12月 中島本町一帯」

丹念に取材 手で描く

 画面奥にある二重の橋は相生橋である。たもとには原爆ドームの前身、県産業奨励館が見える。相生橋から分流する本川と元安川に挟まれた中州が中島本町。現在の平和記念公園である。

 1933(昭和8)年当時は、木造橋と鉄橋が並んでいた。後にT字形となり、原爆投下の目標とされた。市内有数の繁華街だった中島本町は壊滅。大正屋呉服店(43年に閉店後は燃料会館として使用)の建物だけが、レストハウスとして現役である。

 背景画の多くが現代ではデジタルで作業されるが、本作では一筆一筆丁寧に手描きされ、人々の暮らしのぬくもりが伝わる。片渕須直監督は数年にわたり丹念な取材を続け、失われた街を見事に再現した。(呉市立美術館学芸員 角田知扶(ちほ))

(2016年10月2日朝刊掲載)

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