×

連載・特集

「この世界の片隅に」展から <5> 「昭和20年3月19日 灰ケ峰から見た艦載機空襲時の呉」

美しい街 度重なる被害

 呉の観光名所、灰ケ峰。高台から見下ろす呉の街は壮大で美しい。しかし、時は1945(昭和20)年3月。アニメ映画ではこの美しい背景に、米軍機を迎撃する砲弾がさく裂することになる。

 呉への初空襲は、米軍の航空母艦から発進した艦載機によるもので、戦艦大和など旧日本海軍の残存主力艦を標的としていた。呉湾にいなかった大和を除く、多くの艦船が艦隊行動が不可能な状況へと追い込まれた。海軍の本拠地だった呉は、度重なる空襲により甚大な被害を受けた。

 「この世界の片隅に」では、戦中の人々の生活が丁寧に描かれている。本展が呉の歴史を後世へと語り継ぐ一助となれば幸いである。(呉市立美術館学芸員 角田知扶(ちほ))=おわり

(2016年10月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ