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被爆者の記憶 聞き取り進む 広島の追悼祈念館 来春体験記に

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)が、高齢の被爆者に代わって体験記を記すための聞き取りを進めている。4日は同館で、元県立美術館副館長の新川貞之さん(99)=東区=から被爆後の惨状や、原爆を取り上げた文化人との交友の様子を聞いた。

 新川さんは1945年8月9日ごろ、召集先の八幡市(現北九州市)から牛田町(現広島市東区)の自宅に戻った。国鉄己斐駅(現西区)から歩いて帰った市内を「焼け野原の道ばたに死体が転げ、腹からうじ虫が湧いていた」と証言。妻子は無事だったが、義母は割れたガラス破片でけがをしていたという。

 戦後は県庁に勤め、担当した憲法の普及や美術展を通じて、原爆詩人の故峠三吉、原爆記録画を描いた故福井芳郎と親交を深めた。杯を交わした思い出を話し、「戦争はしちゃいけない。平和と文化を愛して」と語った。

 同館の代筆事業は、2006年度にスタート。本年度は公募に応じた9人から聞き取り、来年3月までに体験記にまとめて公開する。(水川恭輔)

(2016年10月5日朝刊掲載)

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