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支援者や被爆者 落胆 マーシャル諸島 核保有国を提訴 

 マーシャル諸島が核兵器保有国に核軍縮義務の履行を求めた訴訟で、ICJが実質審理をしない判断をした5日、核軍縮の打開策として期待していた広島の支援者や被爆者は残念がった。

 「大変ショックだ。核兵器廃絶を求める声が高まっている国際情勢を踏まえ、踏み込んだ司法判断を期待したのに」。訴訟を支援した国際反核法律家協会(IALANA)の共同会長の一人で、広島市中区に事務所を置く佐々木猛也弁護士は声を落とした。

 ICJは1996年、核兵器の使用・威嚇は一般的に国際法違反との勧告的意見を出し、国際社会に一定の影響を与えた。佐々木さんは今回の審理が進めば、国連総会第1委員会(軍縮)で来年の交渉開始に向けた議論が始まった「核兵器禁止条約」の後押しになる、とみていたという。

 勧告的意見に先立つ95年には、ICJで広島市の平岡敬市長が陳述した経緯がある。当時の原爆資料館長で、準備に関わった被爆者の原田浩さん(77)=安佐南区=は「『ヒバクシャ』の立場からの訴えを日本政府や広島市がもっと支援するべきだった」と指摘する。

 ただ、市立大広島平和研究所の水本和実副所長は、NPTの核軍縮交渉義務を根拠に訴訟が提起された点に注目。「NPTを根拠に知恵を絞れば、具体的な行動を起こせると示した意味はある。核兵器の非合法化へ、市民社会などが新たな突破口を開く前例になれば」と今後に期待した。(水川恭輔)

(2016年10月6日朝刊掲載)

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