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民進・連合の会 分裂確実に 山口県議会「上関原発反対」請願の賛否で溝

初の4人割れ 発信力低下 指摘も

 山口県議会は7日、中国電力が上関町で計画する上関原発の建設中止などを求める請願の賛否を巡り、第4会派の民進・連合の会の分裂が確実になった。国政で野党第1党の民進党と、その最大の支援母体の連合山口に所属する県議4人でつくっているが、上関原発に対する考え方の相違が溝を深めた。村岡嗣政知事が中電に海を埋め立てる免許の延長を許可したのを受け、上関原発が論戦の最大の焦点となった定例会は、最終日に予想外の展開となった。(佐藤正明、村田拓也、折口慎一郎)

 突然の発言だった。民進・連合の会が7日午前、県議会棟で開いた会派の会合。上関原発の建設中止と、県に埋め立て免許の延長許可の取り消しを求める2件の請願について、戸倉多香子氏(周南市)が「賛成したい」と切り出したのだ。

翻意を求めず

 会合では、最大会派の自民党(23人)が提出を主導した国に原子力政策の推進を求める意見書案と、請願2件の両方への反対を確認するはずだった。戸倉氏によると、発言を聞いた3人は「仕方がない」などとして、強く翻意を求めなかった。

 午後に始まった本会議。意見書案と請願に対して、自民党や公明党(5人)など5会派が討論をした。「原発建設計画のある県として、国に努力を求めることは当然だ」「県民の多数は原発ゼロを求めている」。上関原発に反対する住民たちが傍聴席から拍手や怒号を飛ばす中、代表者が賛否両論を披露した。 民進・連合の会は討論をしなかった。4人の意見の対立は、自民党が意見書案を提出すると表面化した9月27日以降、くすぶり続けてきた。「会派を代表した発言なんて、誰もできない」。ある県議は、討論への参加を見送った理由を明かす。

 民進党は、2011年3月の福島第1原発事故当時に政権与党だった旧民主党と、旧維新の党が合流した。原発について「30年代に原発稼働ゼロを実現するため、新設・増設はしない」との原則を掲げる。電力総連も加盟する連合は「原発新増設は国が責任を持って判断する」との立場だ。

 その結果、「個別の原発の扱いは、国がエネルギー政策として示すべきだ」とする県議と、「上関原発は新設であり、建設は認められない」とする県議の間で意見対立が深刻化した。分裂を避けるために双方が歩み寄り、6日の段階では4人が統一行動をすると決めていたが、土壇場でひっくり返った。

1人で新会派

 本会議での請願の採決で、畑原基成議長が不採択にする人の起立を促す中、戸倉氏は4人の中でただ1人、座ったまま。終了後には会派を近く離脱し、1人で新会派を届け出る考えを表明。一方で、民進党県連にもとどまる考えを示した。

 会派会長で、民進党県連代表の西嶋裕作氏(山口市)は「分裂は残念だが、考え方が一致しないのだから仕方がない」。民主・連合の会として発足した02年以降、所属議員数が代表質問のできる「4人以上」を割るのは初めてとなる。

 来年1月の衆院解散・総選挙も取り沙汰される中、県内の4小選挙区全てで公認候補者がいない民進党。連合山口の中繁尊範会長は「県議会で代表質問ができなくなり、民進党の発信力が低下しないか心配だ」と危惧する。

上関原発
 中国電力が上関町長島で計画し、改良沸騰水型軽水炉1、2号機の出力は各137万3千キロワット。埋め立て海域は約14万平方メートルで、中電は公有水面埋立法に基づき2008年10月、当時の二井関成知事から免許を受けた。中電は1年後に着工したが、福島第1原発事故の影響で中断。免許期限切れ直前の12年10月、3年延長を県に申請した。15年5月、ことし6月にも延長を申請。村岡嗣政知事が8月3日、一括して19年7月までの延長を許可した。

(2016年10月8日朝刊掲載)

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