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被爆エノキ 紡ぐ交流 児童文学作家・故長崎さんの妻ら基町小訪問 

 広島の被爆エノキを題材にした絵本「ひろしまのエノキ」の作者で、2011年に87歳で亡くなった児童文学作家長崎源之助さんの妻和枝さん(90)=横浜市=と長男幹雄さん(56)=同=が11日、物語の舞台となった広島市中区の基町小を初めて訪れ、児童と交流した。(栾暁雨)

 同小近くの本川沿いにあった被爆エノキの歴史を学ぶ3年生21人が、絵本のストーリーを基にしたオリジナルの歌「もとまちのエノキ」を合唱して出迎えた。和枝さんは「原爆に負けなかったエノキのように、たくましく育つ皆さんに会えてうれしい」と喜んだ。

 原爆で幹が裂けたエノキを守る活動に取り組む基町小の活動を知った長崎さんは1988年2月、同小を訪れ、児童を取材した。同年6月に「ひろしまのエノキ」を出版。被爆エノキは89年2月に枯死したものの、児童たちが種子から育てた苗木を全国に送る活動を続ける。現在、約50カ所で被爆エノキの2世、3世が根付いている。

 和枝さんと幹雄さんは、校庭にある2世と3世のエノキと対面した。和枝さんは「夫が心を寄せたエノキにようやく会えた。エノキから学んだ命の尊さを伝え続けて」と児童に語り掛けた。原詩帆さん(8)は「先輩が守り続けた木を大切に受け継ぐ」と力を込めた。

(2016年10月12日朝刊掲載)

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