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上関埋め立て 免許延長「任期中に結論」

 8月21日の任期満了で引退する山口県の二井関成知事は20日、中国電力の同県上関町への原発建設計画をめぐり、10月に期限が切れる公有水面埋め立て免許について「私の任期中に結論づけたい」と述べた。(金刺大五)

 週明けに始まる県議会定例会の答弁で、延長問題に決着をつける考え。4月の記者会見で自らの任期中の懸案解決にはこだわらない意向を示していたが、方針転換した。

 県議会の本会議終了後、取材に答えた。二井知事は「私は埋め立ての免許権者であり、その立場で延長問題を検討しているさなか。議会答弁で最終的な判断を示したい」と発言。中電から現時点で免許延長の申請は出ていないが、公有水面埋立法に基づき知事の裁量で延長の可否を判断するとみられる。

 二井知事は昨年6月、福島第1原発の事故を受け、上関原発予定地の埋め立て免許の延長を現状では認めない方針を表明。今年4月の会見では、国が今夏をめどにまとめるエネルギー政策をみて県の対応を考えるのが基本とし、任期との兼ね合いから「私がこの問題について、自分で区切りを付けるものでない」としていた。

 しかし、この日は一転、「任期内決着」を表明。免許期限は二井知事の任期切れの後だが「私が免許を出したので、任期後の延長問題も私の段階で結論づけたい」と強調。後任の知事に方針を受け継いでほしいとした。

 中電上関原発準備事務所は「具体的に知事の考えが示されていないのでコメントできない。免許の延長申請の取り扱いは、現時点で決まったものはない」としている。

【解説】 知事選の「争点ぼかし」狙いか

 8月に引退する二井関成知事が、10月に期限が切れる上関原発建設計画の埋め立て免許延長について、任期内に決着させる方針を示した。免許延長問題は建設計画の是非に関わり、7月12日告示の山口県知事選の争点になる可能性が高い。二井知事の前倒し判断には「争点ぼかし」などの批判も出そうだ。

 二井知事は従来、延長申請を判断する材料として、国が新たなエネルギー政策を示し、上関原発をどう位置付けるかを見極めるとしていた。また、実際に中国電力から延長申請が出た段階で、法的な面を整理して慎重に結論を出すとしていた。

 しかし、現段階で国のエネルギー政策も、中電からの延長申請も出ていない。週明けの県議会定例会答弁で、知事が免許の延長を認める可能性は極めて低いとみられるが、判断の時期として先走りの印象は拭えない。

 方針転換の背景にあるとみられるのは告示まで1カ月を切った知事選だ。二井県政の継承を掲げ、知事も支援表明した候補がいる一方、6月に入って「脱原発」論者の候補も急浮上。「上関原発の是非をめぐる選挙」にしたくない知事の思惑が垣間見える。16年間の総仕上げを迎えた二井県政にとって突然の方針転換はその幕引きにはそぐわない。(金刺大五)

(2012年6月21日朝刊掲載)

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