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社説・コラム

『記者縦横』 被爆建物 若者が活用案

■ヒロシマ平和メディアセンター・二井理江

 「中に入れないなんて」。高校3年の男子生徒は悔しそうに言った。広島市中区にある広島大旧理学部1号館。築85年を過ぎた被爆建物で、原爆が落とされた時には外郭を残して全焼した。戦後は校舎として使われ、25年前に理学部が東広島市に移転してからは、そのままに。天井や壁が剥がれ落ち、タイルや窓ガラス片が床に散乱するなど傷みが激しく、建物内部に入るのは危険だ、というわけだ。

 平和をテーマに取材・活動する中国新聞ジュニアライターが担当する紙面「ピース・シーズ」の取材で、同館の現状と今後について調べ、老朽化の激しさを知った。「せっかくの被爆建物なのに…」

 所有する広島市は昨年度、保存・活用アイデアを公募した。本年度は、同館の保存・活用に関する懇談会を設置。年度内に結論を出す方針にしている。

 アイデア募集に応募した71人は、50代以上が3分の2を占め、20歳未満は1人。懇談会のメンバー14人は、広島地区にある大学の幹部や被爆者団体の長、地元団体の長たちだ。

 ジュニアライターは、活用策が決まっていない被爆建物の使い道を紙面で提案しようと決めた。同館と、旧陸軍被服支廠(ししょう)(南区)の二つの被爆建物が対象。耐震工事など費用がかかるのも踏まえた上で、柔軟に考えている。掲載は20日の予定だ。被爆の記憶の継承者である中高生による、被爆建物ならではの活用案に注目してほしい。

(2016年10月14日朝刊掲載)

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