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国際組織への移行目指す 放影研将来構想

 日米両政府が共同運営する放射線影響研究所(放影研、広島市南区)は21日、組織の在り方や研究内容に関する将来構想を発表した。長期目標として、原爆や放射線被曝(ひばく)の影響に関する研究教育拠点となる国際組織への移行を初めて掲げた。

 将来構想は米ワシントンで19、20日に開かれた評議員会で報告、了承された。長期、中期、短期に分けて目標を盛り込んだ。

 放影研の将来像について第三者機関が2008年、日米両政府と協議するよう勧告。だが、政府間協議が進まないため放影研が独自に構想を打ち出した。

 長期目標は「世界の卓越した放射線影響の研究教育拠点を目指す」とし、十数年以上先の独立した国際的組織への移行に言及した。背景には厳しい財政難もある。

 被爆者の寿命調査は2045年、被爆2世の臨床調査は70年に終わると想定。それまでに210万件以上の被爆者の血液試料を中心とした放射線疫学分野の資料が蓄積されると見込む。

 それらを基に、東京電力福島第1原発事故でも焦点となった低線量被曝によるリスクや、被爆2世への遺伝学的影響調査など15項目の研究目標を設定。世界中の研究者が資料を広く活用できるよう一元管理し、データベースにアクセスできるようにする。

 また、評議員会では福島第1原発事故への放影研の対応も報告。放射線測定の専門家を現地に派遣したことや、福島県民への健康管理調査で福島県立医大と連携協定を結んだことなどを説明した。(田中美千子)

(2012年6月22日朝刊掲載)

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