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被爆前「街並み」公開 原爆資料館の発掘現場 広島

 広島市は15日、原爆資料館(中区)の本館敷地で進めている発掘調査の現場を初めて一般公開した。市民や観光客約1100人が、被爆時の地層から出た街並みの遺構や生活用品を見学。原爆で壊滅した繁華街、旧中島地区(現平和記念公園)のかつての営みと被害の実態に触れた。

 公開したのは本館敷地約2200平方メートルのうち、9月に調査を始めた西側の約1400平方メートル。銭湯「菊の湯」跡から見つかった、湯を沸かすまきを燃やすためのれんが造りのたき口や、近くの寺院の墓地の一角、井戸やトイレなどの遺構が地下約70センチから掘り出されており、来場者がカメラを向けていた。

 昨年度調べた敷地東側から出土した被爆瓦や溶けた牛乳瓶なども展示。菊の湯の東隣で家族が牛乳配達店を営んでいた山迫裕三さん(81)=西区=は「うちの牛乳瓶じゃろう。子どもの頃、よくパンツ一丁姿で菊の湯に入りに行ったもんよ」と懐かしんだ。神戸市北区から訪れた大学3年北野愛さん(22)は「原爆で奪われた市民の日常に胸が締め付けられる」と見て回っていた。

 発掘調査は、本館の耐震化工事を地中に施す前に埋蔵物の記録を残すため、市が市文化財団に委託して昨年11月に始めた。今年12月までで、市は収集した生活用品や遺構の一部を資料館で保存、活用する方針。(水川恭輔)

(2016年10月16日朝刊掲載)

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