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日比友好 平和願う記念碑 安来の加納美術館 莞蕾とキリノ元大統領たたえる

戦犯恩赦の文など刻む

 太平洋戦争後、フィリピンで戦犯として裁かれた日本人への恩赦を求めて運動した安来市出身の画家、加納莞蕾(かんらい)(1904~77年)と、同国の故エルピディオ・キリノ大統領との友好をたたえ、平和を願う記念碑が、同市広瀬町の市加納美術館に完成した。23日、関係者約200人が集い、除幕式があった。(小林正明)

 正面入り口脇に設置した記念碑は高さ1・8メートル、幅3メートル。恩赦を決断後、大統領が莞蕾と初めて対面した写真のほか、恩赦時の声明文、2人の思いである「赦(ゆる)し難きを赦す」などの文を刻んだ。

 記念碑は、ことしが同館の開館20年、両国の国交正常化60年でもあることから、関係者らで建立実行委員会を設立。全国の約650人から寄付350万円を受け、制作した。

 除幕式には、キリノ大統領の子孫たちも出席。今夏、同館で作品展を開いた米子市の創作人形作家安部朱美さん(66)は、日本兵に殺されたキリノ大統領の妻と子ども3人をモデルにした作品を寄贈した。

 莞蕾の四女で同館の名誉館長、加納佳世子さん(71)は「莞蕾と大統領の友情を形にして残したかった。2人の思いを皆さんと共有したい」とあいさつ。大統領の親族を代表し、孫のエディー・キリノさん(66)が「キリノへの親善、愛情を示していただき、非常に感謝している」と述べた。

 莞蕾は、知人がフィリピンの軍事法廷で死刑判決を受けたのをきっかけに、49年から恩赦を求める運動に没頭。嘆願書43通を受け取った大統領は53年、収監者105人を恩赦で釈放した。

(2016年10月23日朝刊掲載)

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