×

ニュース

アフガン 対話で学ぶ 出身者3人 内戦語る講座 

広島で31人参加 「生の声聞き 自ら行動を」

 国際協力機構(JICA)研修員として東広島市に長期滞在中のアフガニスタン人3人から内戦中の経験を聴き、平和の実現に向けて話し合う講座が広島市中区の竹屋公民館であった。復興に向かう同国は今も治安や教育面で問題を抱え、支援を求めている。参加者は、市民レベルで関心を高め、現実を知る大切さを感じ取った。(山本祐司)

 内戦は、1978年のクーデターを受け、旧ソ連が翌79年共産主義を広げようと軍事侵攻して始まった。当時3歳だったマルフ・クシュデルさん(39)は爆撃で家を失った。学校が軍隊の基地になったため教育も受けられず、家族で隣国のパキスタンへ避難。「戦争の果てには多くの死者と貧困がある」と嘆いた。2006年に米国留学の機会を得た自分を「幸運だった」と振り返り、教育は「人を安全にする仕方を教えてくれる」と強調した。

 ワハダトラ・カパルワクさん(29)は、タリバン政権下の90年代後半を「人生で最悪だった」と話した。病院が破壊され、兄は病死。家計も苦しかった。政権崩壊後、禁止されていた女子教育が再開され、姉は字が書けるようになった。「自分の背後には、教育を受ける機会に恵まれない人が何千といる」と訴えた。

 タリバン兵士に捕まった体験を生々しく語ったのはアマン・アトイさん(28)。13年、叔父に会いに行くため父と乗っていた車が、兵士に止められた。同乗者は全員降ろされ、運転手が最初に殺された。自分も死を覚悟したが、別の場所に監禁されている間に、地元兵に救出された。「これが母国の現実」と述べた。

 その後、3人と参加者は六つの班に分かれ、「現在や未来のアフガニスタンのためにできること」「日本が平和であるためにできること」をテーマに話し合った。意見を交わす中で、各国からアフガニスタンへの援助が利権を握る一部の層にとどまり、国民全体に行き渡っていない現状も課題として挙げられた。

 まとめで各班の代表者が発表。アフガニスタンに対し、教育によって多民族間の融和を図る▽被爆から復興した広島を参考にしてもらう―などを提案した。市民には、メディアにとらわれず生の声を聞く機会に参加する▽国民全体が政治に関心を持つ―など、自ら行動する必要性を求めた。

 参加した中国新聞ジュニアライターの高校1年沖野加奈さん(16)は「聞いたことのない話ばかりで、新しい発見の連続だった。先進国が支援する一方、いまだ死におびえ、生活に苦しむ人がいる状況を知らないといけない」と話していた。

 講座は、JICA中国とひろしま国際センターが企画。社会人や大学生、ジュニアライターら31人が参加した。アフガニスタンの3人は、広島大で農業や都市計画を学んでいる。

(2016年10月24日朝刊掲載)

年別アーカイブ