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「役者魂」「気さくな人」 関係者から悼む声相次ぐ 平幹二朗さん死去

 82歳の現役俳優として活躍のさなか、23日に急逝が分かった平幹二朗さんは、広島市中区に生まれ、府中市上下町で青春時代を送った。故蜷川幸雄さんらと数々の伝説的舞台をつくり上げ、故郷へも温かいまなざしを注いだ名優。悼む声が広がった。

 平さんは2015年から今年にかけ、「王女メディア」で全国を巡演した。ハードな日程の中、広島公演には点滴を打ちながら臨んだという。演劇鑑賞団体「広島市民劇場」の職員井上邦枝さん(68)は「膝も痛いと聞いていたが、舞台ではそぶりを見せなかった。役者魂を感じた」と振り返る。

 05年に上演した「冬物語」の終演後には会員と居酒屋で交流。「何でも聞いてください―と気さくな人だった。次はどんな芝居を見せてくれるかと期待していたのに」と惜しんだ。

 平さんは原爆投下時、上下町に疎開中で助かったが、多くの幼なじみを亡くしている。「尾道市民劇場」の柿本陽子事務局長(46)は「王女メディア」上演時、会報に載せるインタビューを担当。故郷の記憶をたどり、「同世代の人を含めて喜んでくれたら」と語る姿が印象に残っているという。

 上下高の演劇部が俳優への出発点。1997年、上下町の芝居小屋「翁座」で公演に臨んだ平さんは「先輩の女子部員に強引に誘われて入部した。今も頭が上がりません」と明かし、会場を沸かせた。

 「高校時代からせりふを覚えるのも早く、声も抜群で音楽の先生にも買われていた」と、部員仲間だった広島市佐伯区の高冨智子さん(82)。突然の別れを悲しんだ。(余村泰樹、山崎雄一)

(2016年10月25日朝刊掲載)

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