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連載・特集

海上自衛隊呉音楽隊 創設60年 <下> 地域に根付く 市民身近 文化の担い手

 「心に残る素敵(すてき)なコンサート」「鳴りやまない拍手が続いていました」。海上自衛隊呉音楽隊のファンクラブのフェイスブックが、会場の熱気を伝えた。

「いいね!」150人

 音楽隊は9月19日、呉市文化ホールでファミリーコンサートを開いた。後日のフェイスブックには150人を超える全国のファンから「いいね!」が寄せられた。

 書き込んだのは松江市の会社員井上恵吾さん(44)。神戸市での演奏会や砕氷艦しらせの呉市寄港なども報告する。前任者から引き継ぎ、2013年ごろからフェイスブックを管理、運営する。

 幼いころから自衛隊の装備品を撮影するのが趣味だった。その先で音楽隊の演奏に触れるうちに魅了された。「つらいことがあっても演奏を聴くと前向きになれる。ファンや隊員の家族からメッセージが届くのがやりがい」と井上さん。「迫力ある演奏の魅力を知ってほしい」

 呉音楽隊は、桜松館(呉市幸町)で練習する。美術館通りを散策する市民が足を止め、桜松館から漏れる音色に耳を傾ける姿は呉らしい光景の一つ。「市民に近い音楽隊」として、地元に根を下ろす象徴といえる。

中学生に教える

 音楽隊は、呉市内の中学校の吹奏楽部員のレベルアップに協力する。隊員が09年度から年1回、初心者が大半の中学1年生を対象に、楽器の持ち方や姿勢など基本を教える。これまでに計約1400人が受講した。

 今夏に指導を受けたコントラバス担当の和庄中1年松本凜々さん(12)は「高音が安定して出せるようになった。貴重な時間だった」と感謝する。同中吹奏楽部顧問の飴井智広教諭(45)は「生徒の吹奏楽に向き合う姿勢や意欲が高まる」と受け止める。呉音楽隊は港町の文化を形づくる担い手でもある。(浜村満大)

(2016年10月25日朝刊掲載)

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