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福島の健康調査 医師ら課題報告 放射線影響学会

 日本放射線影響学会の第59回大会が26日、広島市中区のJMSアステールプラザで始まった。東京電力福島第1原発事故後に始まった福島県の県民健康調査などに携わる医師らによる市民公開講座もあり、約150人が参加した。

 公開講座は「被ばく者に寄り添っての健康見守りと科学調査の調和点」をテーマに、4人が講演。福島県立医科大の緑川早苗准教授は、同県の子ども対象の甲状腺検査について「見守り目的のはずが、逆に不安を生んだ」と語り、「各自に受診の判断を迫ることも負担につながっている」とジレンマを明かした。

 放射線影響研究所(広島市南区)の児玉和紀主席研究員が、原爆被爆者調査の意義を解説。広島県被団協の坪井直理事長(91)は「治療しない健診に不満もあったが、人類全体を考えて協力している」と被爆者の心情を代弁。大分県立看護科学大の甲斐倫明教授は「放射線防護の体系は科学データに基づくだけでなく、社会が判断する時代になってきている」と指摘した。

 大会は28日までで、研究者約500人が集い、低線量被曝(ひばく)の影響などについて議論する。(馬場洋太)

(2016年10月27日朝刊掲載)

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