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交渉入り 一定の評価 核兵器禁止条約 国連委決議 被爆者 反対の日本政府を批判 

 国連総会第1委員会(軍縮)で「核兵器禁止条約」制定交渉の開始を定めた決議案が採択されたのを受け、被爆者たちは28日、核兵器廃絶への「前進」と歓迎した。ただ、米国などの核兵器保有国と歩調を合わせるように被爆国政府が反対票を投じる事態になり、怒りも膨らんだ。(水川恭輔、長久豪佑、田中美千子)

 「喜ばしい。核兵器を禁止し、ゼロにするため、人道上から大いに話し合ってほしい」。広島県被団協の坪井直理事長(91)は、事務所が入る広島平和会館(広島市中区)で、記者団に顔をほころばせた。

 核兵器の非人道性に対する国際的な関心の高まりをてこに、近年本格化してきた禁止条約の議論。その必要性を訴えてきた被爆地広島の官民は一様に、国際社会の決断と今後の議論に期待を寄せる。

 それだけに、米国の「核の傘」の下にあり、決議案に反対した日本政府への不信は高まるばかりだ。坪井理事長は「核抑止はもってのほか。『(法的禁止を)みんなで考えよう』となぜ言えんのか」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(72)も「考えを改めるべきだ」と憤りを隠さない。

 抗議行動は早速広がっている。市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」は安倍晋三首相と岸田文雄外相宛ての抗議文を内閣府と外務省にファクスした。森滝春子共同代表(77)は「交渉の主導を期待されながら真反対の立場を取った日本は世界に失望を与える」と批判する。広島市は、松井一実市長名で「被爆者の思いに背き、極めて遺憾」とする岸田外相宛ての文書を外務省に届けた。

 南区出身の被爆者サーロー節子さん(84)はカナダ・トロント市の自宅で採択の様子を伝えるインターネット中継を見守った。「日本は言葉と行動が著しく違い、腹立たしいし、恥ずかしい。全ての国が来春の交渉に参加するよう、市民社会から一層働き掛けを強めたい」と力を込めた。

(2016年10月29日朝刊掲載)

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