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社説・コラム

核兵器禁止条約 国連委決議 広島市立大平和研 水本副所長に聞く

核非合法化 被爆国主導を 市民社会との連動 期待

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)に「核兵器禁止条約」制定交渉の今後の展望や、日本に求められる役割を聞いた。(水川恭輔)

 採決で反対した核兵器保有国は当面、抵抗して交渉に参加しないだろう。ただ、非保有国だけでも進める意義はある。条約が制定されれば、「非合法だから」と具体的根拠を持って保有国に廃絶を突き付けられるからだ。

 保有国それぞれの世論も核保有を巡って一枚岩ではない。国際規範で非合法となれば、各国内で核軍縮を目指す市民社会などの運動を後押しし得る。核兵器を安全保障に不可欠だとする保有国の理屈に説得力を失わせる転換点になり得る。

 それなのに、非合法化への重要な根拠であるヒロシマ・ナガサキの非人道的な被害を体験した被爆国政府が反対した。核軍縮よりも米国が差し出す「核の傘」を優先する現状が色濃く見える。保有国と非保有国の橋渡し役と言いながら、これでは非保有国の信頼を得られない。

 米国が非合法化の議論に激しく抵抗する一因には、自国の原爆投下の非人道性に触れることを避けたい点もあろう。その米国に対し、被害を受けた日本は正面から非人道的な被害と非合法化の必要性を訴えるべきだ。求められるのは、米国の側に立つことではなく、「核の傘」への依存を減らすアイデアも示しながら米国を非合法化への議論へ巻き込むこと。条約交渉の会議に出席して、保有国の代弁者になってはならない。

(2016年10月29日朝刊掲載)

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