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東北の寺復興へ一役 広島市北部 本願寺派9寺 「支援のつどい」開始

 浄土真宗本願寺派安芸教区で広島市北部の沼田組に属する9寺が、中区寺町の本願寺広島別院で「東北(福島)支援のつどい」を開いた。2011年3月の東日本大震災を受け、被災地の支援活動を続けてきた縁で初めて企画。参加者の懇志を現地の寺の復興に役立てる取り組みで、今後も年に1回継続していく。(桜井邦彦)

 1回目のつどいは9月下旬にあり、僧侶や門信徒たち約210人が参加した。福島県飯舘村の本願寺派善仁寺住職で村農政係長の杉岡誠さん(40)が「『故郷を失う痛み』と『故郷に住み続ける覚悟』」と題し、避難生活を送る村民の思いや寺の現状を語った。

原発事故で避難

 善仁寺は、福島第1原発事故に伴う居住制限区域にあるため、杉岡住職は、寺から北西に約40キロ離れた宮城県境の桑折町にご本尊と避難。一戸建て住宅を借りて暮らし、役場まで片道約1時間かけて通っている。

 杉岡さんは、荒れ放題の農地を再生し、農業を再開しようと夢見る高齢者の姿を紹介。「先祖伝来の地を自分の代で終わらせたくないという使命感と、自分たちが頑張る姿を見せることで若い世代を勇気づけたいという願いがある」と住民の思いを代弁し、「一人一人が生きがいを再生できた瞬間が、本当の復興ではないか」と力説した。

 講演に続き、教雲寺(安佐北区)の藤井聡之住職(61)との対談もあった。避難先に散らばっている門信徒と寺の今後の関係を問われた杉岡住職は、福島県南相馬市の寺を借りて報恩講を営んでいる現状を説明し、「うちの寺は放射線量がまだ高い。いつの日か、善仁寺で報恩講が再びできる日がくれば。私の夢は、みんなの笑顔が集い、お念仏を味わえる日常が戻ること」と答えた。

 つどいを企画した沼田組「西ブロック」の9寺は震災後、原発事故で避難を迫られた福島県の門信徒の声を踏まえ、阿弥陀如来の絵像や報恩講のお供え用の米を贈った。ここ3年は、沼田組の活動に加わる形で現地の草刈りボランティアに参加するなどしてきたが、多くのエリアで居住制限が来春にも解除されると聞き、ブロックとしても現地寺院の復興に役立つ取り組みをしようと思い立った。

広島市民として

 藤井住職は「離散した門信徒をまとめていく寺の苦労は並大抵のものではないはず」と、杉岡住職たち現地の僧侶の思いを推し量る。つどいの発起人となった西正寺(安佐北区)の紫花大和住職(71)は「原爆を受けた広島の市民として、放射線被害に苦しむ福島の人たちを放っておけない。その悲しみを私たちが忘れてはいけない」と言う。

 支援のつどいは、西ブロックが毎年開いている布教大会を2回にし、そのうち1回を充てることにした。懇志として今回集まった67万円は現地の相馬組に贈った。来年からは、西ブロック所属の各寺で会場と講師を持ち回って実施する予定。

 紫花住職は「何が必要ですかと問い、『阿弥陀さんが足りない』と相談を受けたのが出発点。最初の支援で絵像を贈った時の住職の涙は今も忘れられない。お寺は被災された方々の心のよりどころ。微力だが、私たちが身近にできることで復興を支え続けていきたい」と力を込める。

(2016年10月31日朝刊掲載)

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