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判断を前に F35B配備計画と岩国市 <上> 安全性 「最新鋭」米側アピール

 岩国市の米海兵隊岩国基地に来年1月以降、配備計画がある最新鋭ステルス戦闘機F35B。計16機が米国外で初配備される計画を巡り、福田良彦市長は10月24日(日本時間25日)、米アリゾナ州の海兵隊ユマ基地で同機を視察した。2日の市議会全員協議会で市が対応方針を表明するのを前に、視察内容や判断材料を整理する。(野田華奈子)

 「自分自身のことがよく分かる、非常に賢い航空機だ」。ユマ基地の格納庫内で、F35Bを運用する第121海兵戦闘攻撃中隊司令のJ・T・バルド中佐は、機体を指さしながら自信に満ちた表情で言った。

漠然とした内容

 「全てがコンピューター制御され、離陸前に不具合を把握して対処できる。複数のシステムによるサポート機能もある」と中佐。更新対象となるFA18ホーネットやAV8Bハリアーに比べ、「安全性が高い」と繰り返した。岩国に移るパイロットは他機種で500~2千時間の飛行を経験し、審査で選ばれた「精鋭」だという。

 配備計画は8月22日、外務、防衛両政務官が山口県と市に伝達した。日本では運用されていない最新鋭機とあって、受け入れの判断には安全性の確認が不可欠だ。だが、国側の説明は「米政府が安全性、信頼性を確認して量産された」という漠然とした内容だった。9月末の市議会全協では、議員から国や市に実機の視察を促す意見もあり、外務省を中心に日米間で調整。視察には、外務、防衛両省の職員と中国四国防衛局長たちが同行した。

騒音「差異ない」

 ユマ基地視察は1日だけだったが、バルド中佐や同基地司令官たち幹部3人がF35Bの説明に当たった。福田市長は視察後、「国の説明にはなかった具体的な情報が得られた」と述べ、31日に市役所で開いた会見では「(安全性など)幾つかの不安が払拭(ふっしょく)できた」と踏み込んだ。市が準備していた騒音測定は基地側の許可が下りず実施できなかったものの、「現行機と差異はないと感じた」とし、米側の主張と同じ見解を示した。

 ただ、今回の視察で米軍側がF35Bの安全性について説明した内容は、とりわけ秘匿性が高いとは思えない。国が配備計画を地元自治体に伝える前に収集できた情報も含まれていたと思われる。市は国に対し文書で質問を重ねているが、その回答の精度が十分なのか、判断材料を議会や市民が共有できているのかといった疑問はなお残る。

F35
 レーダーに映りにくい高度なステルス性を誇る最新鋭戦闘機。米ロッキード・マーチン社が米海・空軍、海兵隊向けに3タイプを開発。米海兵隊岩国基地に配備予定のF35Bは垂直離着陸でき、全長15・6メートル、翼幅10・7メートル、最大速度マッハ1・6。

(2016年11月1日朝刊掲載)

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