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判断を前に F35B配備計画と岩国市 <下> 責任 市民の生活・安全を左右

 「視察は本来、国がやるべきだ。容認するためのアリバイづくりにすぎない」

 岩国市の米海兵隊岩国基地に来年1月以降、最新鋭ステルス戦闘機F35B計16機が既存部隊の「機種更新」として配備される計画。市の対応方針の表明を翌日に控えた1日、市民説明会の開催などを求めて市役所を訪れた、配備反対市民集会実行委員会の岡村寛委員長(73)は、対応した基地政策課の職員に鋭く詰め寄った。

米4年前に方針

 米国外初となるF35Bの配備計画が国から山口県と市に伝えられたのは8月22日。来年1月の開始時期まで半年もない唐突な通告だった。だが、米側は約4年前の2012年12月に岩国配備の方針を表明し、ことし3月には米海軍高官が具体的時期に言及した。

 防衛省はことし8月に至るまで、県市の照会に対し「米政府から正式な通報を受けていない」と繰り返すのみだった。米軍内では着々と準備が進んでいたとみられ、F35Bを運用している米アリゾナ州の海兵隊ユマ基地のパイロットたちは岩国行きを心待ちにしていたという。

「結論ありきだ」

 市は、配備への対応方針を示すのに当たって、「周辺住民の生活環境に影響があるかどうか」を判断基準とする。福田良彦市長が24日(日本時間25日)、ユマ基地で外務、防衛両省の職員たちとF35Bを視察したのも、騒音や運用状況などの情報を収集するのが目的だった。これまでの国からの文書回答や騒音予測図、市議会全員協議会でのやりとりなども含めて「総合的に判断する」(福田市長)としているが、配備までの時間的余裕がない中、反対派の市民には「結論ありきだ」との見方が強い。

 岩国基地を離着陸する米軍機の影響は市内にとどまらない。広島県内でも訓練空域に向かう米軍機の騒音被害や低空飛行が確認されている。1日、F35Bの配備反対などを岩国市に求めた「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の菊間みどり共同代表(54)は「高性能な米軍機だから安全だと強調されても、私たちの安全は担保されない。生活が脅かされるのは目に見えている」と訴える。

 市の対応が配備を肯定するための「理屈探し」であってはならないし、なし崩し的な基地機能強化につながるとの不安には真正面から答えなければならない。配備計画に対する判断を示す福田市長には、将来にわたる重い責任がある。(野田華奈子)

(2016年11月2日朝刊掲載)

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