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遺族の意思能力否定 在米被爆者訴訟 広島地裁が棄却

 広島で被爆し、米国に移住後に亡くなった被爆者の妻が、国外の居住を理由に、夫の健康管理手当の受給権を認めていなかったのは不当として、国に慰謝料など約120万円を求めた訴訟の判決が2日、広島地裁であり、小西洋裁判長は訴えを却下した。

 小西裁判長は、妻が認知症で、代理人の弁護士と直接会ったこともなかったことを挙げ、「訴訟の提起などを代理人に委任した時点で、原告の意思能力があったとはいえない」と判断した。

 健康管理手当の受給権を巡る一連の在外被爆者の訴訟では、受給権を認めなかった旧厚生省の通達を違法とした最高裁判決が2007年に確定して以降、国は裁判を起こした在外被爆者、遺族と順次和解。厚生労働省によると、これまでに約3900人の被爆者と和解が成立している。

 原告は2012年に提訴していた。田村和之・広島大名誉教授(行政法)は「被爆者や遺族の老いも進み、手続きが難しくなっている」と強調。提訴を前提にした賠償の仕組みを国は見直すべきだとしている。(有岡英俊)

(2016年11月3日朝刊掲載)

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