×

ニュース

映像で語る満州悲話 広島の松田さん 高田開拓団を取材 10日上映

 終戦間際の1944、45年に国策で安芸高田市などの旧高田郡から旧満州(中国東北部)に渡った「満州高田開拓団」をテーマにしたドキュメンタリー映像作品「集団自決 鍬(くわ)の戦士の悲話」が完成した。アマチュア映像作家の松田治三さん(80)=広島市東区=が制作し、10日、西区の区民文化センターで上映される。(山成耕太)

 県満州開拓史や高田郡史によると、旧高田郡から約300人が開拓団として吉林省徳恵県に渡った。学校に避難した20人が終戦直後、約2千人の群衆に囲まれて脱出不能となり、全員が集団自決。栄養失調や伝染病などで命を落とした団員も多かった。生きて引き揚げができた人は100人余りという。

 戦史に関心のあった松田さんは、開拓団関係者から、団員だった母子の墓標に国民学校で戦死したとする記載があることを教えられた。事実を知ろうと、ことし4月、生存者や遺族への聞き取りを始めた。

 取材を重ねていくうちに、集団自決の事実を確認。農作業に励んだ平和な生活が終戦直後に一変し、着の身着のままコーリャン畑を逃げて生き延びた人の証言などを撮影した。当時の写真なども収録し、15分50秒の作品に仕上げた。取材を進めていくうちに、集団自決の事実を知らなかった遺族もいたという。

 元新聞記者の松田さんは、退職後の65歳からアマチュア映像作家グループ「広島エイト倶楽部(くらぶ)」(西区)に入り、原爆や大久野島(竹原市)の毒ガスなど、戦争の悲劇をテーマにした作品を手掛けてきた。「戦後71年がたち、ようやく語り始める関係者もいる。市民が国策に翻弄(ほんろう)された事実を後世に語り継いでほしい」と願う。

 同クラブが主催する上映会(午後1時~4時半)で、松田さんの作品も上映される。入場無料。

(2016年11月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ