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国通告2ヵ月半で決着 F35岩国配備 山口知事容認表明 市長の米視察結果 重視

 最新鋭ステルス戦闘機F35Bを米海兵隊岩国基地(岩国市)へ配備する計画は、山口県の村岡嗣政知事が8日に受け入れを表明したことで、来年1月と同8月に米国外で初めて運用を始める日程がほぼ確定した。県と岩国市、基地周辺の和木、周防大島両町は「配備後も生活環境は悪化しない」と評価したのに対し、配備に反対してきた地元の住民団体は「安全安心を守れない」などと撤回を訴えた。

 F35Bの配備計画を巡る村岡知事と基地周辺の1市2町の首長との非公開の会談は、県庁で約30分間続いた。終了後、そろって取材に応じた4人。村岡知事は「周辺住民の生活環境が現状より悪化する状況は生じない」と容認理由を説明した。

 会談で岩国市の福田良彦市長は、F35Bが現在拠点とする米アリゾナ州の海兵隊ユマ基地の視察の結果を説明した。小型の模型を持ち込み「機体自らが不具合をチェックする」などと安全性を強調。騒音についても「ある意味、実際に体感して懸念を拭い去ることができた」と述べた。

 この報告を、村岡知事は「実際に体感された情報は重要だ。安全性についてもより信頼度が高まった」と受け止めた。9月の中間文書で「騒音にほとんど変化はなく、安全性への懸念も少ない」とした自らの評価を裏付ける情報が加わり、容認以外の選択肢はなかったといえる。

 福田市長の視察報告には、和木町の米本正明町長と周防大島町の椎木巧町長も大きく影響を受けた。会談後、米本町長は「福田市長から直接、ユマ視察の結果を聞いた。受け入れざるを得ない」、椎木町長は「ユマに出向き、現地で体感した福田市長が了承するのであれば、受け入れはやむを得ない」とした。

 8月22日に国が配備計画を伝えてから、約2カ月半での決着。村岡知事は「急いで結論を出したという認識はない。必要な情報を確認して結論を得た」と主張した。今後は騒音対策や安全性の確保に万全を期すよう、1市2町とともに国に働き掛けるとした。(折口慎一郎)

反対団体は一斉に批判

 F35Bの岩国基地への配備計画に反対してきた岩国市などの住民団体は8日、計画を容認した各首長の判断を一斉に批判した。

 基地の機能強化に反対する4団体でつくる「配備反対市民集会実行委員会」。岡村寛実行委員長(73)は「国や米国の言うことにむやみに従い、住民の安全安心を守れるのか」と憤った。20日には、岩国市役所前で500人規模の集会を計画し、抗議の声を上げる。

 同実行委の構成団体の一つ、「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」は9月以降で5度、機体の安全性の確認などを県や岩国市に申し入れてきた。久米慶典顧問(60)は「安全性に関する情報収集が不十分で、住民説明会もない。容認は欠陥のある判断だ」と強調した。

 廿日市市の市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋事務局長(63)は「低空飛行などによる騒音は山口だけの問題ではない」とし、近く岩国市に承認撤回を求める考えだ。(松本恭治)

(2016年11月9日朝刊掲載)

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