×

ニュース

「ヒバクシャは同じ」 カザフ大統領 広島の平和公園初訪問

 ソ連時代に核実験が繰り返されたカザフスタンのナザルバエフ大統領(76)が9日、広島市中区の平和記念公園を初めて訪れ、原爆資料館を見学した。演説では核実験による被害に触れて「『ヒバクシャ』というのは同じだ」と指摘。核兵器廃絶へ連携を呼び掛けた。

 松井一実市長の案内で原爆慰霊碑に献花した後、資料館へ。広島平和文化センターの小溝泰義理事長の説明を聞き、焼け焦げた弁当箱などの展示を見た。

 国際会議場では約500人を前に演説し「自分の目で原爆被害を見て、とても心を動かされている」と強調。450回以上の核実験で自国が被害を受けたとし「核兵器の恐怖を二度と起こさないため世界が共同して行動する責任がある。手をつなぎたい」と語った。

 松井市長から「特別名誉市民」の称号を贈られ、資料館の芳名録には「協力すれば、世界に平和を構築し全ての国民が繁栄できる」と記した。昼食会では、12月に来日するロシアのプーチン大統領に被爆地訪問を促す考えを示したという。

 同氏は1991年の同国独立時から大統領を務め、同年にセミパラチンスク核実験場を閉鎖。2009年に発効した中央アジア非核兵器地帯条約の締結にも関わった。(水川恭輔)

核廃絶思い共有 一層の交流誓う 広島のカザフ被曝者支援団体

 カザフスタンの被曝(ひばく)者支援を続ける広島市の市民団体「ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト」(ヒロセミ)のメンバーたちは9日、ナザルバエフ大統領の訪問を歓迎し、核兵器廃絶へ一層の交流を誓った。

 「閃光(せんこう)に引き裂かれたわが古里よ」―。広島国際会議場(中区)での歓迎行事では市民有志たち約40人が、現地で核実験反対運動の象徴となった歌「ザマナイ~時代よ!」を日本語とカザフ語で響かせた。ヒロセミの小畠知恵子副世話人代表(64)は「廃絶を願う声を共に世界に広げたい」と力を込めた。

 ヒロセミは1994年の広島アジア大会で同国を応援した市民有志たちで98年に設立。現地に医療機器や医薬品を贈り、検査のための医師を派遣してきた。留学生受け入れも仲介する。

 合唱に加わった同国の在日大使館職員カシュケイ・テギ・アイマンさん(37)も「広島の人と思いを共有できうれしい。友好がもっと深まれば」と言う。ヒロセミ名誉会長の平岡敬・元広島市長(88)も大統領演説を聞きに訪れ「核被害の記憶の継承へ、若者の交流にさらに力を入れたい」と話した。(水川恭輔、坂本顕)

(2016年11月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ