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被爆者「核廃絶譲れぬ」 米大統領にトランプ氏 広島市 被爆地訪問求める

 米大統領選で勝利した共和党候補のドナルド・トランプ氏に対し、広島の被爆者たちは9日、核超大国のトップとして核兵器廃絶に向けた行動を起こすよう求めた。ただ、核政策を巡る過激な発言を重ねてきただけに懸念も入り交じる。広島市はオバマ大統領に続く被爆地訪問を求める構えだ。(長久豪佑、水川恭輔)

 「核問題に関しては人類的な立場を取ってもらいたい。核抑止論で平和が実現するとは思えない」。中区で記者会見した広島県被団協の坪井直理事長(91)は新大統領へ注文した。

 オバマ大統領は選挙戦で「核兵器なき世界」の追求を公約に掲げ、就任間もない2009年4月には「プラハ演説」で包括的な構想を示し、被爆地も期待を高めた。これに対し、トランプ氏は日韓の核武装を容認する考えを述べたり、テロ組織に対する核兵器使用を示唆したりと、物議を醸す発言が相次いだ。

 「言うべきことは言う。核問題で譲ることはない」と坪井理事長。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(72)も中国新聞の取材に「核について知らないから言えるのだろう。廃絶を求める私たちの立場は変わらない」と話した。

 オバマ大統領に対しては、被爆の実態に触れて廃絶への思いを固めてほしいと、両被団協をはじめ被爆地の官民を挙げて訪問を呼び掛け、この5月に現職米大統領として初めて実現をみた経緯がある。広島市の松井一実市長はトランプ氏の勝利を受けて発表したコメントで、「核兵器に依存する考え方から脱却し、『核兵器のない世界』に向けて具体的な行動を期待する」とし、広島訪問を求めていく考えを表明した。

 平和首長会議(会長・松井市長)事務総長を務める広島平和文化センターの小溝泰義理事長は、今後の被爆地広島の役割について「退任後のオバマ氏とも連携し、核兵器のない世界に向けた国際社会の流れを加速させたい」と話している。

(2016年11月10日朝刊掲載)

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