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米大統領にオバマ氏 核軍縮進展に期待

■記者 森田裕美

 核超大国・米国の次期大統領に、核兵器廃絶を政策として掲げる民主党のオバマ上院議員が決まった。5日、被爆地広島では核軍縮の進展への期待感が高まった。

 広島市の秋葉忠利市長は同日、コメントを発表した。「米国の核政策が好転する契機になる」と期待し、オバマ氏が就任後のできるだけ早い時期に広島を訪問するよう求めた。

 広島県被団協の坪井直理事長(82)も、新政権にかつてない希望を託す。「期待を言えばきりがない。まずは選挙期間中の言動を実行してほしい」。オバマ氏は選挙戦で、ブッシュ政権が拒否してきた包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准に向けて努力し、新たな核兵器開発を認めないなどの具体的な方針を明らかにしている。

 もう一つの県被団協金子一士理事長(81)も「核兵器廃絶が夢ではなくなった」と歓迎する。「一気に進めるのは無理でも、せめて生きている間に核兵器がなくなっていく様子を確認させてほしい」と期待を膨らませた。

 「少なくとも核使用も辞さない姿勢だったブッシュ政権より情勢は良くなる」。核兵器廃絶をめざすヒロシマの会の森滝春子共同代表(69)は率直な受け止めを語る。「核兵器廃絶に向けた被爆地の運動も、米国の変化をチャンスにしたい」

 ただ、核兵器廃絶がすぐ進むわけではない。核問題に詳しい特定非営利活動法人(NPO法人)ピースデポの湯浅一郎代表(58)=呉市=は「同盟国の安全のために核抑止力を必要とする米政府の政策自体は大きくは変わらない。核に依存しない安全保障政策を日本政府がどう打ち出せるか。日本の世論も重要になる」と指摘している。

(2008年11月6日朝刊掲載)



「核軍縮」に首相冷ややか  「米が言っても簡単には…」

■記者 道面雅量、岡田浩平

 米大統領選で当選したオバマ氏が核軍縮に強い熱意を示していることについて、麻生太郎首相は5日、記者団の質問に「米国がいくら言ったってそんな簡単にできる話じゃない」と冷ややかな見方を示した。一方、河村建夫官房長官は「歓迎すべきこと」と積極的に評価し、受け止めは対照的だった。

 麻生首相は「核軍縮の方向は日本として一貫して言っている」とした上で「(米大統領が)オバマ氏になったからといって、世界の核軍縮が急激に進む感じがあるかというと、そんな簡単な話じゃない。いろいろ時間をかけてやっていかないと駄目だ」と述べた。

 一方、河村官房長官は記者会見で「日本は唯一の被爆国として核軍縮、核拡散防止に積極的な行動を取ってきている。その方向が明確に打ち出されているということであれば歓迎すべきこと」とし、「新政権の動きを十分注視したい」と強い期待感を示した。

(2008年11月6日朝刊掲載)

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