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「核なき世界 遠のく」 日印協定署名 広島の被爆者批判

 日本とインドが原子力協定に署名した11日、核拡散につながるとして反対してきた被爆地・広島は「核兵器なき世界が遠のく」と抗議の声を上げた。

 「原子力の民生利用と軍事利用は裏表の関係。核兵器を自由に持ちたい国に原発関連技術を売り込めばいつ転用されるか分からず危ない」。広島県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(76)は憤る。

 インドは、核軍縮交渉を課す核拡散防止条約(NPT)に加盟せずに核兵器を持つ。核実験再開時に日本の協力を停止する「歯止め」が協定には付くが、大越事務局長は「核を持っている国に、実験をさせないというのがどれだけ意味があるのか。廃絶させるしかない」と強調した。

 もう一つの県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(74)も、北朝鮮がNPTから「脱退」を宣言して核実験を繰り返している中、今回の協定でNPT体制がさらに弱体化するのを懸念。「被爆者としては、はがゆく、悲しい」。来年3月に始まる見通しの「核兵器禁止条約」を巡る多国間交渉に日本、インドが参加し、廃絶への道筋を付けるよう願った。

 7日に協定交渉中止を日本政府に文書で求めた広島市の松井一実市長はコメントを出し、被爆地が繰り返し抗議の声を上げてきた重みを受け止めるよう要請。「NPT体制の強化を」と求めた。(岡田浩平)

(2016年11月12日朝刊掲載)

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