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山口・八島で退避訓練 伊方原発 8月の再稼働後初

 愛媛県は11日、四国電力伊方原発(同県伊方町)で大地震による重大事故を想定し、住民や周辺の山口・大分両県、内閣府などから計約2万3千人が参加する避難訓練を実施した。同原発から半径30キロ圏内に山口県上関町の離島、八島の一部がかかる同県と同町では8月12日の同原発3号機の再稼働後初の訓練で、八島の島民は屋内退避した。

 愛媛県で震度6強の地震が起き、原発で全電源が喪失、放射性物質が放出されたとの想定。事故の際、佐田岬半島の先端側に住む約5千人が孤立する可能性がある。訓練では再稼働後初めて、豊後水道を挟んで対岸の大分県へ渡った。大分などへの海路避難は愛媛県が人数を決め、住民の3%の約150人が参加した。

 伊方原発では緊急時対策所で四国電力社員約50人が状況把握などをし、3号機の放射線管理区域内で被曝(ひばく)者やけが人が出たとして救急搬送した。同原発近くには国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が通っている。

 上関町の八島では午前10時45分、島にいた住民20人に対し、町が防災無線で屋内退避を指示。八島ふれあいセンターにいた住民を除き、全戸に電話して自宅待機を求め、約25分で全員の安全を確かめた。県の職員が同センターで、甲状腺被曝を予防する効果があるとされる安定ヨウ素剤の備蓄を確認した。島の高齢化率は89・29%。同町は「お年寄りがけがをする恐れがある」として、3年続けて屋内退避にとどめた。

 同町の本土側では本年度から島外避難所となった町総合文化センターに県が救護所を設置。県庁では四国電力や愛媛県から次々届く情報を上関町や関係機関に伝えた。県職員4人を愛媛県西予市の現地対策本部などに派遣した。

 山口県の坂本竜生危機管理監は「滞りなく終えられた。さらに緊張感を持って訓練の充実を図りたい」とした。(佐藤正明、井上龍太郎)

八島(上関)住民 安全に懸念 伊方原発 再稼働後 山口県内初の防災訓練

 8月の四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の再稼働後、山口県内では初めてとなった11日の原子力防災訓練。同原発から半径30キロ圏内に一部が含まれる上関町の離島、八島では、住民が昨年と同様、屋内退避に限った訓練に臨んだ。28人中25人はお年寄り。重大事故の際、全員の安全を確保しきれるのか、懸念は尽きない。(井上龍太郎、佐藤正明)

 訓練は午前10時45分、屋内退避を呼び掛ける町の防災無線で始まった。今回、町は住民の所在をまず電話で確かめる方法を取った。連絡がつかない家には、8月から活動する地域おこし協力隊員の杉渕凪さん(21)と、久保昇さん(84)が直接出向いて確認した。

 前日の雨にぬれた、コケが覆う急坂。久保さんは「動ける者は限定されている。見て回らないと」と、滑りやすい道を慎重に上り下りした。町によると、島にこの日いたのは20人。約25分で全員の安否を把握した。  住民の半数以上が75歳を超える。「常日頃から助け合いで暮らしている。スムーズにいった」と八島区長の大田勝さん(78)。一方で「こういう訓練なら何とかできるけど、(負担が)これ以上重くなったら私たちだけではようせん」とこぼす。

 県と上関町が、伊方原発の重大事故を想定し、2013年に始めた防災訓練。住民が一時避難所の八島ふれあいセンターに集まった13年を除き、ここ3年は屋内退避にとどまる。約12キロ北の本土に船で逃れる島外避難は、けがの恐れもあり、実現していない。

 県はこの日、住民が本土に渡った際の避難先となる町総合文化センターで、救護所設置の訓練をした。訓練での島外避難の試行について、県の坂本竜生危機管理監は「町と協議の上、取り組む必要はある」と指摘。訓練内容の充実も図るとしている。

(2016年11月12日朝刊掲載)

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