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オスプレイ 配備通告「心外だ」 山口知事 岩国市長も批判

 米政府が垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への配備を正式通告したことを受け、山口県の二井関成知事は29日、県庁で取材に応じ「安全性の確認ができていない状況で見切り発車した。大変心外だ」と不快感をあらわにした。

 オスプレイは7月下旬にも米海兵隊岩国基地に先行搬入される見通し。米政府は墜落事故原因の調査結果が整うまでは岩国基地での試験飛行は控えるとしているが、二井知事は「住民の安全の問題。もっと慎重に対応してもらいたかった」と苦言を呈し、「引き続き反対せざるを得ない」と述べた。

 岩国市の福田良彦市長も「飛行の有無に関係なく了解できない。安全性が確認できるまで飛行しないのであれば陸揚げを行うべきではない」とのコメントを出した。

 中国四国防衛局はこの日、辰己昌良局長が岩国市役所を、藤代誠企画部長が山口県庁をそれぞれ訪ね、個別に通告内容を説明した。森本敏防衛相は7月1日、県庁と岩国市役所を訪ね、二井知事と福田市長に理解を求める方針。(山田英和、酒井亨)

配備通告に岩国反発 なし崩しの一時駐機警戒

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの先行搬入が米政府から伝えられた米海兵隊岩国基地(岩国市)。日米両政府は、安全性が再確認されるまで岩国での試験飛行は見合わせるとしたことで理解を得たい考えだが、地元の岩国市や山口県は強く反発。なし崩し的な一時駐機につなげる伏線ではないかとの疑念も広がっている。

 モロッコや米フロリダ州で相次いだオスプレイ墜落事故を受け、山口県と岩国市は「安全性が再確認されるまでは先行搬入に反対」と訴え続けてきた。

 しかし、29日の通告は、地元が求める安全性の再確認前に岩国への先行搬入を事実上強行する内容。日米両政府は、事故の追加調査情報を8月に提供するまで試験飛行を見合わせるとしたが、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)で10月上旬に本格運用させる計画を予定通り進めるための「見切り発車」とも取れる行動だ。

 「事故が多発する機種がいずれ飛行することに変わりはない。まやかし、ごまかし、押し付けにすぎない」と基地問題に詳しい元山口県議の久米慶典氏(56)は指摘。「何が何でも普天間への配備を進めたいという米側の意識の表れ」と言い切った。

 普天間への配備には沖縄県議会が反対決議するなど反発は極めて強い。岩国市議会も先行搬入反対の意見書案を可決するなどしており、味村憲征市議(61)は「のみやすい条件でまず岩国基地に入れ、沖縄の態度を見極めて配備のタイミングを図ろうとしている」と警戒する。

 米軍は、普天間配備後も毎月2、3日間はオスプレイを岩国基地に派遣、低空飛行訓練をすることを明らかにしている。

 山口大の纐纈(こうけつ)厚副学長(61)=現代日本政治軍事論=は「オスプレイは約3900キロと航続距離が長く、普天間ではなく岩国基地でも展開に問題はない。沖縄の強い反発を見越して、岩国への駐機を主軸にしたとも考えられる」と懸念する。

 岩国への先行搬入は沖縄も注視。沖縄国際大の前泊博盛教授(51)=基地経済論=は「地元が少しでも受け入れやすい条件を付け、とにかく計画の進行を図るのが米軍の手口。岩国に入れば沖縄への配備も近くなる。一度受け入れれば固定化は免れない」とくぎを刺す。(堀晋也)

米の正式通告・報道資料 要旨

 米政府が29日、日本側に示した垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備に関する通告と報道資料要旨は次の通り。

 【正式通告】
 一、米軍普天間飛行場のCH46中型輸送ヘリコプターをMV22オスプレイに更新する。本格運用は10月初旬の見
    通し。
 一、2013年夏には普天間に2番目のMV22飛行隊を配備する。
 一、日本における米国のプレゼンスに大きな変化はない。要員、家族にも大きな変更はない。

 【報道資料】
 一、4月のモロッコでの事故で、機体に不具合はなかったと断定した。
 一、空軍仕様のCV22による6月の事故に関しては、継続的運用を妨げるいかなる情報もなく、米国防総省として運
    用が安全だと確信している。
 一、これらの結論に基づきMV22の日本への輸送を進めると決定した。7月下旬に陸揚げのため岩国基地に到着予
    定。
 一、米国の事故調査が日本政府に提供され、安全性が確認されるまでの間、日本でのいかなる運用も控える。事故
   調査結果は8月に日本へ提供される見通し。
 一、運用を見合わせるのは世界中で日本のみ。米本土を含む全世界で運用を継続する。

「不安解消まだ」「搬入自体に反対」 広島・島根にも波紋

 米垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場配備に関する米側の正式通告で、米海兵隊岩国基地への7月下旬の先行搬入が強まった29日、広島、島根県側の自治体にも反発が相次いだ。

 大竹市の入山欣郎市長は「安全性が確認されておらず、沖縄、山口県民や、大竹市民の不安が除かれていない中での通告は残念だ」。廿日市市の真野勝弘市長は「岩国基地への搬入そのものに反対する」と強調した。

 日米両政府は岩国基地での試験飛行は当面、見合わせる方針。一方で日本政府はこの日の閣議決定で、配備後の低空飛行訓練は「必要な訓練」とした。中国地方でのオスプレイの訓練実施は不明だが、広島県安芸太田町の小坂真治町長は「住民の不安は解消されていない。政府は慎重な対応を」と注文する。

 米軍機の低空飛行の監視強化のため、昨年12月に騒音測定器を独自設置した浜田市。安全安心推進課の前木俊昭課長は「近隣市町と連携し、オスプレイだけでなく、全ての米軍機の訓練中止を強く求めていく必要がある」とした。

オスプレイ正式通告 岩国基地周辺 拒む声 渦巻く米政府への不信感

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを7月下旬に米海兵隊岩国基地(岩国市)に先行搬入する米政府の方針が明らかになった29日、岩国基地周辺の住民からは先行搬入を拒む声が相次いだ。岩国での試験飛行見合わせも同時に伝えられたが、強硬姿勢を貫く米政府への不信も渦巻いた。(大村隆)

 「あちこちで落ちているからね」。基地北門から西約300メートル。米軍機の爆音が響く自宅で草刈りをしていた旭町1丁目の無職竹本淳司さん(74)は危機感をあらわにした。「米国のような広い土地ならまだしも、ここみたいな住宅密集地に落ちたら…」と言葉を選んだ。

 基地業者門の南西60メートル。車町3丁目の車第二自治会の若佐賢治会長(58)も「普天間飛行場(沖縄県)への配備問題が片づいてから岩国に話をするのが筋。普天間配備が難しければ、ずっと岩国にいる可能性もある」と指摘した。安全性が再確認されるまで岩国基地での試験飛行はしないとする日米合意にも「当然。国民を危険にさらすような訓練はあってはならない」と強調した。

 基地正門から北東約200メートルに暮らす車町3丁目の主婦山県孝子さん(61)は「当然来てほしくないが、これまでもいくら反対しても駄目だった。安全には最大限、配慮してほしい」とした。

 業者門の北東60メートルの旭町1丁目、無職重永敏一さん(67)は自家用車を洗いながら「ずっと住んでいて騒音などに慣れてしまった。どれだけ反対しても来ると決まったら来る。仕方がない」と力なく肩を落とした。

 国防への理解の声も。業者門そばの畑で農作業をしていた車町2丁目の無職稲田毅さん(68)は「沖縄だけに押しつけるのはおかしい。負担軽減のためには協力すべきだ」と話し、相次ぐ墜落事故についても「どんな機器も、失敗しながら技術革新していくものだ」と受け止める。

オスプレイ搬入 反対訴え署名活動 岩国で市民団体

 安保条約廃棄・岩国基地撤去岩国地域実行委員会(米重政彦代表)は29日、岩国市麻里布町の商店街で垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの岩国基地先行搬入などに反対する署名活動をした。

 「オスプレイ岩国へ持ち込むな」などと書かれた横断幕を手にした実行委のメンバー8人が、通行客に署名を求めたりビラを配ったりした。  署名に応じた同市今津町の会社員村田誠さん(34)は「基地の近くに住んでいる。(オスプレイは)事故も多く、危ないものは来てほしくない」と話していた。

 署名活動は7月末までの毎週金曜日に同商店街で行い、結果を集約して国に提出する。

(2012年6月30日朝刊掲載)

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