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移転の本部 設備不足も 原子力防災訓練 要支援者避難 読めぬ時間 島根県など

 中国電力島根原発(松江市鹿島町)の事故に備え、島根県が14日、鳥取県や原発30キロ圏の両県6市などと実施した原子力防災訓練。県災害対策本部の移転作業や要支援者の搬送などで、課題が浮かび上がった。(小林正明、秋吉正哉、口元惇矢)

◆対策本部移転

 全国で唯一、県庁所在地に原発が立地するため、初めて災害対策本部を出雲市大津町の県出雲合同庁舎に移転する準備訓練をした。

 原発の南西約28キロの同庁舎では、県の職員たち14人が移転作業に当たった。電話やインターネット回線を接続し、コピー・印刷の複合機3台や県庁から運び込んだパソコン11台の動作を確認した。

 トラブルはなかったが、課題も見つかった。「約300人と想定される対策本部の移転先として、電話回線は最低でも50本程度必要だが、出雲庁舎には46本しかない」と県原子力安全対策課の担当者。「使用する電力量や複合機の調達などを検証する」とした。

◆要支援者避難

 原発の南西約3キロの鹿島町古浦地区では、在宅の要支援者を搬送する訓練があった。陸上自衛隊出雲駐屯地の隊員が、要支援者役の市職員を担架で自衛隊の救急車に運んだ。町内4地区の高齢者ら計84人は、バスで鹿島文化ホールに移動した。

 同町の鹿島病院では、職員28人が対応手順を確認。陸自のヘリコプターなどを使い、患者役の県職員を搬送した。同病院の下瀬宏事務部長は「人工呼吸器を着けた患者も多く、実際の避難はかなり時間がかかる」と懸念する。

◆放射線量測定

 大気中の放射線量を測定するモニタリング訓練は、県職員と中電関係者が参加。3人一組の5班に分かれ、松江市内の計7カ所を調べた。防護服に身を包んだ職員たちは、空き地やため池などで土壌や草、水を採取した。

 現場作業は順調だったが、全班の出動までが想定より30分長くかかったという。県原子力環境センターの西浩幸センター長は「手順はできていた。習熟に努めたい」と語った。

(2016年11月15日朝刊掲載)

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