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外国人観光客 戦争体験教えて 東京の大学生・渡部さん 原爆ドーム前で活動 

写真撮影「悲しみ共有」

 日本大芸術学部写真学科4年の渡部直樹さん(22)=東京都小金井市=が、原爆ドーム(広島市中区)を訪れる外国人観光客に、自身や家族の戦争体験を聞き取っている。ドームに対面した表情を写真に収め、聞き書きとともに卒業制作にまとめる。(田中謙太郎)

 「第2次世界大戦中、ユダヤ人をかくまった祖父は強制収容所に送られた」というオランダ人男性、ベトナム戦争で北ベトナム軍兵士として従軍後、精神を病んだ父を持つベトナム人男性…。8月から広島に毎月約10日間滞在し、外国人に声を掛けている。

 「原爆ドームに来る外国人観光客は、戦争や平和に関心がある人も多い。ドームの前に立ち、自分と戦争の関わりを話そうという気持ちになるのでは」と渡部さん。これまでに13の国・地域の約30人から話を聞いた。

 被爆者の表情を記録した写真家土田ヒロミさんの連作に大学の講義で出合い、町や人の心に残る戦争の痕跡を探ろうと考えた。被爆建物を撮影するため、昨年8月から広島を繰り返し訪れている。

 広島滞在中、1990年代に徴兵経験のある韓国人男性と宿泊先で話したのを契機に、戦争体験の聞き取りを始めた。渡部さんは「体験を聞かないと、戦争が今も身近にあると感じることはできない。戦争の恐怖や悲しみを共有し、原因に思いを巡らせることができれば、戦争を防ぐことにもつながる」と考えている。

(2016年11月16日朝刊掲載)

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