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毒ガス 最後の集団健診 大久野島被害 個別対応に移行 竹原

 戦時中、大久野島(竹原市忠海町)での毒ガス製造に従事させられた被害者に対し、広島大の医師たちでつくる「大久野島毒ガス傷害研究会」が1974年から国から委託を受け実施してきた集団健診が16日、終了した。来年度からは地域の医療機関での個別健診に移行する。

 最後の集団健診は竹原市人権センターであり、42人が受診した。研究会に謝意を伝える式典があり、被害者を代表し大久野島学徒親和会(三原市本郷町)の神明正明会長(84)が、研究会の河野修興会長(63)=広島都市学園大学長=に花束を贈った。

 集団健診は広島大の前身校の一つである県立医科大が52年にボランティアでスタート。74年、国からの受託事業となった。健康管理手帳を持つ人が毎年会場に出向いて無料で受診する形式で、ことしは竹原市や三原市で計5回開いた。

 県被爆者支援課によると、診療データの蓄積によって呼吸器系の疾患など被害実態が統計的に証明された。国の被害者救済の事業創設を後押しし、その後の支援拡充にもつながったという。一方で、近年は高齢化で指定の日時、場所での受診が難しい人が増えた。県外在住者の個別受診を含め、ピークの88年は3646人が受けたが、昨年は550人だった。

 手帳保有者1901人(10月1日)の平均年齢は88・6歳。今後は、県が指定する県内34の医療機関での無料の個別受診に切り替える。研究会の河野会長は「指定病院と協力し、今後も被害者の健康維持に従事したい」と述べた。(山田祐)

(2016年11月17日朝刊掲載)

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