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社説・コラム

『ひと・とき』 漫画家・こうの史代さん アニメ化実現 夢のよう

 「子どもが結婚して孫ができたような気持ち」。自作「この世界の片隅に」が同名のアニメーション映画になった感想をそう表現する。舞台あいさつのために広島市に里帰りした。

 作品は、戦時下の広島、呉の普通の暮らしを静かに淡々と描く。「本当に誰かの心に届いているのだろうか」。漠然とした不安を抱えている時に、片渕須直監督からアニメ化への思いをしたためた手紙を受け取った。「夢の世界から来たようだった」。うれしくて、手紙を枕の下に敷いて寝たという。

 それから6年。全国の3374人が寄せた3900万円余りの支援金を原動力にして映画が出来上がり、上映されている。「音楽が戦争―戦後―現代のつながりをうまく伝えてくれて、原作にはない色彩がきれい。こういう街に生まれ育ったんだなと思ってください」と呼び掛けた。(増田泉子)

(2016年11月18日朝刊掲載)

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