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オスプレイ搬入 拒否 「安全性に不安」 防衛相と会談

 森本敏防衛相は1日、山口県入りし、米軍が米海兵隊岩国基地(岩国市)に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを先行搬入する計画について、岩国市の福田良彦市長と二井関成知事と面会して理解を求めた。福田市長、二井知事とも先行搬入を強く拒否した。森本防衛相はこの日、山口県入り前に沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事とも会談した。(酒井亨、山田英和)

 日本政府や自治体に米軍の配備を拒否する法的権限はないが、野田政権は配備を急ぐ米側との間に立って対応に苦慮しそうだ。

 福田市長は岩国市役所で森本防衛相から説明を受け、「市は国防に協力するスタンスできた。このまま陸揚げが強行された場合は国と地方の信頼関係が揺るぎかねない」と反発。「安全性の不安が払拭(ふっしょく)されていない状況では飛行の有無にかかわらず了解できない」と述べ、政府が米側に先行搬入自体の中止を要請するよう求めた。

 二井知事もこの後、県庁で森本防衛相と会談。「スケジュールありきで話が進められている。なし崩し的に片を付けるような考え方で姑息(こそく)だ」と批判した。

 森本防衛相は「(試験飛行を当面見合わせると)米側に約束させたのは異例ともいえる措置。決してなし崩し的にここまできたわけではない」と理解を求めたが、知事は強い反対の意思を示した。

 森本防衛相は会談後に記者団に「厳しい意見をもらった。野田佳彦首相や関係閣僚と協議する」と述べた。

 米側は、オスプレイを7月下旬に米海兵隊岩国基地へ搬入して試験飛行し、10月初旬から沖縄県の普天間飛行場(宜野湾市)を拠点に本格運用する方針。岩国での試験飛行は、墜落事故の追加的な調査結果を8月に日本政府へ提供して安全性が確認されるまで控える意向だ。

オスプレイ配備計画 安全性の説明 米側に求める 岡田副総理

 岡田克也副総理は1日、「明日の安心」対話集会で訪れた周南市で、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備計画について「米国に安全性の説明を求めている。(住民の)不安や心配は理解でき、事故原因について丁寧な説明が必要だ」と述べた。

 安全性が確認されていない段階での地元説明について「配備について政府が米国に『しばらくストップしろ』とか『ダメだ』と言う権限はない。そういう中で、ぎりぎりのことをやっている」と理解を求めた。

怒りのノー 岩国市長・知事 防衛相と会談 「結論ありき」「姑息」

 「結論ありき」「姑息(こそく)」―。岩国市の福田良彦市長と山口県の二井関成知事は1日、米海兵隊岩国基地(岩国市)への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ先行搬入を申し入れた森本敏防衛相に、それぞれ強い言葉で不快や不信を表した。(酒井亨、山田英和)

 福田市長は市役所の会談の場で着席したまま森本防衛相を迎える異例の応対。一礼後、防衛相と視線もほとんど合わせず、予定の2倍の約40分に及んだ会談では「安全だという結論ありきと受け止めざるを得ない」などと厳しい言葉を並べた。

 空母艦載機移転に協力する立場で衆院議員から市長に転身した福田氏は、協力の条件として「市民の不安を払拭(ふっしょく)する国との具体的な協議」を挙げていた。「(岩国への先行搬入は)10日から2週間程度」と6月11日に防衛省から説明を受けたともいい、それをないがしろにされた形での会談では「(11日の)説明と違う」と語気を強める場面もあった。

 温厚で日ごろは感情をあまり出さない二井知事も、安全性の確保がないまま計画通りに手続きを進めようとする国や米政府の姿勢を「姑息」とばっさり。

 岩国市の愛宕山地域開発事業跡地の売却を検討するさなかに在沖縄海兵隊の岩国移転が急浮上するなど、苦労を重ねてきただけに、「なぜ(オスプレイ配備を)急ぐ必要があるのか」と、いらだった口調で森本防衛相に問いただした。

 知事との会談には県議会の柳居俊学議長たちも同席。柳居議長は森本防衛相に二井知事と同様の考え方を伝えたうえで「強行されればこれまで築いてきた国との信頼関係が揺らぐ」と先行搬入撤回を強く求めた。

「帰れ」 130人抗議 岩国市役所前

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米海兵隊岩国基地への先行搬入をめぐり、基地反対派の団体メンバーらは1日、森本敏防衛相が訪れた岩国市役所前で激しい抗議運動を展開した。

 約130人が「怒」「オスプレイはいらない」などと書かれたプラカードを掲げて集まり、抗議のシュプレヒコール。森本防衛相を乗せた車が午後2時25分ごろに姿を現すと「どこの国の大臣か」「帰れ」などと反発の声を上げ、会談終了の同3時20分ごろまで「オスプレイは来るな」「市長は拒否しろ」などと叫び続けた。

 メンバーの一人で、愛宕山地域開発事業跡地の米軍住宅化に反対する「愛宕山を守る会」の岡村寛世話人代表は「米は日本の国民や政府を無視して計画を強行し、大臣は言いなりになって伝えにきただけ」と憤った。

 基地監視団体「リムピース」共同代表の田村順玄市議も「米は何としてもスケジュール通りに進めてくる。市は最後まで反対の態度を貫いてほしい」とした。(堀晋也)

防衛相岩国入り 政府姿勢へ怒り広がる 市民 「情けない」「不安」

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの先行搬入をめぐり、森本敏防衛相が山口県入りした1日、米海兵隊岩国基地を抱える地元岩国市では、計画を強行する米政府だけでなく日本政府の姿勢にも怒りが広がった。「政府は情けない」「絶対反対だ」。不信と不安を募らせる市民の声が基地の街を包んだ。

 森本防衛相が福田良彦市長に理解を求めた市役所。反対のシュプレヒコールが上がるすぐそばのJR岩国駅前の商店街で、同市室の木町の会社員松本伸彦さん(45)は「安全性より、米国の言いなりになっている政府が許せない」と憤った。「防衛相も著作ではいろいろ大きなことを言っていたが入閣した途端にああいう状態。情けない」と切り捨てた。

 同市藤生町の会社員西村陽子さん(35)は「事故があったばかりで危険」と反対。「政府は米政府と妥協しないといけないと思うが何かあってからでは怖い。安全性についてはきちんとすべきだ」と注文した。

 同市麻里布町の会社員清水研二さん(43)も「墜落の危険性があるものは当然来てほしくない。こどもの将来が不安だ」。政府に対し「民主党のやることは何もかもちぐはぐ。もっと良い方向に国を向けてくれないと」とあきれていた。

 同市室の木町の会社員有川賢一さん(45)は「12月に岩国錦帯橋空港(愛称)が開港するのにあんな問題が多いものが飛んでもらっては困る」と話した。

 同市車町の主婦西川友子さん(57)は「反対だが、もう決定している感じ。政府が何を言っても駄目、まるで米国の属州だ」と肩を落とした。

 一部には容認する声も。同市南岩国町の会社員村本昭夫さん(68)は「落ちることを想定していたら何も進まない」。同市昭和町の無職山田正男さん(75)は「国防のためだ」と一定の理解を示しながら「飛行する場合は海上と聞いている。市内上空を飛ぶとしたら絶対反対だ」と話した。

(2012年7月2日朝刊掲載)

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