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避難時の混乱 根強い不安 島根原発30キロ圏防災訓練 3時間超の移動「遠い」

 島根県が19日、中国電力島根原発(松江市鹿島町)30キロ圏の鳥取県や両県6市と実施した原子力防災訓練は、避難指示の手段に緊急速報メールを使うなど初めての内容を試みた。一方、住民たちからは、避難時の混乱に対する不安の声も上がった。

緊急速報メール

 原発30キロ圏の6市では午前8時ごろ、避難開始を呼び掛けるメールが配信された。マナーモードでも強制的に着信音が鳴るため、松江市のJR松江駅では、携帯電話や周囲を確認する利用者の姿が見られた。

 同市宍道町の専門学校生種田咲世さん(19)は「知らなかったので驚いた。1人だと、どう動けば良いか分からず不安」と話した。

スクリーニング

 島根県側では、放射性物質の付着の有無を調べるスクリーニングの会場の候補地として県が2月に選んだ14地点のうち、3地点で訓練を実施した。

 出雲市の湖陵総合公園には、松江、出雲市の約180人がバスで集結。ワイパーやタイヤを調べ、汚染があったバスは乗客の放射線量を測定する手順を確認した。雲南市のさくらおろち湖ボート競技施設では、時間短縮の効果をみるため、通過するだけで放射線量が分かるゲート型モニターを試験的に使った。

広域避難

 被害が広範囲に及ぶ可能性がある原発事故に備え、避難訓練は島根県西部や鳥取県東部にも広げた。松江市の住民約160人はバスで浜田市の県立大へ。3時間以上の移動に、住民からは「遠いね」との声が漏れた。松江市朝日地区の町内会自治会連合会副会長、門脇郁雄さん(64)は「長時間バスにいると、不安で怒りだす人がいるのではないか。車中で気持ちを穏やかにする対策を」と提案した。

 鳥取市の鳥取県立中央病院では、避難中に負傷したとの想定で、航空自衛隊美保基地(境港市)から鳥取空港(鳥取市)まで空路で運ばれた患者の除染などを訓練。指揮した放射線科の中村一彦部長は「手順はスムーズに進んだが、実際にはもっと人手が必要だ」と話していた。

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見えぬ放射線 住民ら真剣 原子力防災訓練

 中国電力島根原発(松江市鹿島町)の事故に備え、県などが14、19日の2日間で実施した原子力防災訓練。延べ約4千人が参加し、重大事故発生から原発30キロ圏外への住民避難まで、多種多様な訓練に臨んだ。

 島根原発2号機で事故が発生したと想定した14日は、中電からの通報を受けた県が関係機関との連絡体制を確認。溝口善兵衛知事も出席した県災害対策本部会議では、中電社員が原子炉の状況を説明した。住民への避難指示の判断基準となる原発周辺の放射線量も測定した。

 19日は30キロ圏で避難訓練を実施。住民やバスへの放射性物質の付着を調べるスクリーニングや、除染作業の訓練があった。(秋吉正哉)

(2016年11月20日朝刊掲載)

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