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放影研データ限界指摘 独研究者 内部被曝を考慮せず

 放射線に詳しいドイツの研究者2人を招いた講演会が6月26日夜、広島市中区の市まちづくり市民交流プラザであった。

 民間団体の欧州放射線リスク委員会のインゲ・シュミッツフォイエルハーケ委員長は、放射線影響研究所(放影研、南区)の持つ広島、長崎の被爆者データの限界について講演。放射性降下物(フォールアウト)や誘導放射線など内部被曝(ひばく)の影響を十分に考慮していないなどの問題点を挙げた。その上で、放影研のデータは、原爆とは被曝の形態が異なる福島第1原発事故による被曝者には、直接は使えないと強調した。

 ドイツ放射線防護協会のセバスチャン・プフルークバイル会長はチェルノブイリ原発事故(1986年)後、汚染地では甲状腺がんが子どもだけでなく、若者の間でも増えていることなどを報告した。

 講演前の会見では、内部被曝の評価が割れている日本の現状について聞かれ、「意見の違いではなく、きちんと調べれば分かる。例えば放射性ヨウ素が牧草に付き、それを食べた牛のミルクを通じて人間の体に入れば、甲状腺がんにつながるメカニズムは明らかだ」と指摘。さらに「経済的・政治的な理由から内部被曝の影響を隠したり低く見たりする傾向がある」と述べた。

 講演会は、4月に発足した市民と科学者の内部被曝問題研究会(理事長・沢田昭二名古屋大名誉教授)が主催し、約100人が参加した。(宮崎智三)

(2012年7月2日朝刊掲載)

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