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放影研 施設入居案浮上 広島市総合健康センター内

 日米両政府が共同運営する放射線影響研究所(放影研、広島市南区)の移転問題で、市と市医師会が所有する市総合健康センター(中区千田町)への入居案が浮上していることが22日、分かった。国側から既存施設へ入る移転策を検討するよう求められた市が案をまとめ、関係先への働き掛けを始めている。

 市総合健康センターは鉄筋6階建てで1989年に開館。複数の関係者によると、市は、市医師会が西区の市医師会館の建て替え議論を始めている点に着目。この建て替えが実現した場合に、市医師会がセンター2~4階で運営している、被爆者を検査するための「臨床検査センター」を新会館へ移し、空いたスペースへ放影研が入る案を描いているという。

 市は市医師会側にすでに協力を打診。近く正式に依頼する方針でいる。

 放影研の移転を巡っては、市が市総合健康センターに隣接する広島大工学部跡地を候補地として取得するなどし、93年に移転構想がいったんまとまった。しかし、米国側が財政難を理由に難色を示し、凍結状態が続いていた。市は2015年、放影研がある比治山公園を「平和の丘」として再整備する構想を掲げ、早期移転の実現を国などに要望していた。

 こうした中、厚生労働省がことし3月、財政的な理由から放影研の専用建物を日米両政府の負担で新設するのは困難とし、既存の建物に入居する形での移転を検討するよう市側に伝達。広さ5千~7千平方メートル、年間賃料6千万円程度という条件も示した。これを受けて市は新たな移転案の検討を進めたとみられる。

 市医師会の松村誠会長は「市からの正式な依頼を受け、検討に入りたい。協力したい思いはある」と言う。放影研は「研究機能を維持するため知恵を絞る必要がある。慎重に検討したい」、厚労省健康局は「市などの動きを見守りたい」としている。(長久豪佑)

放射線影響研究所(放影研)
 原爆放射線の長期的な影響を調査するため、1947年に設立された原爆傷害調査委員会(ABCC)が前身。その後、広島、長崎を拠点に約12万人を対象に調査を開始。75年に放影研に改組し、日米両政府が共同出資で運営する。被爆者のがん発生率やがんによる死亡率と放射線量との関連などを調査。被爆2世、胎内被爆者に関する研究も続けている。

(2016年11月23日朝刊掲載)

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