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被爆者の記憶 市民聞き取り 冊子・HPで継承へ

 広島市の市民グループ「待っとる間に鶴折る会・ヒロシマ」が、県内に住むお年寄りに被爆体験や戦時中の暮らしを聞き取る活動を始めた。取材を続けて来年の原爆の日を目標に冊子を作る。ホームページ(HP)にも掲載し、若い世代への継承に生かす。(有岡英俊)

 最初の取材は6月30日。原爆で姉を失った安佐北区の樽谷正夫さん(77)を、メンバーの原田まゆのさん(19)がインタビューした。

 樽谷さんは原爆投下時、広島市中区にあった千田国民学校の5年生で、北広島町の寺に疎開していた。爆心地近くにいた14歳の姉カズエさんは2日後に息を引き取った。大勢の犠牲者と火葬され、遺骨は残っていない。

 緑内障を患い、67歳で両目の視力を失った樽谷さん。孫は10歳。自分が姉を失ったのと同じ年齢になった。孫を抱くたびに「いとおしい人を失った戦争や原爆は許されないとの思いが強まる」と語った。

 「人を思いやり、困っている人を助けることの積み重ねが平和につながる」。原田さんは同世代へのメッセージと受け止め、2時間の取材を終えた。

 飲食店などで客に鶴を折ってもらう活動を続ける鶴折る会。メンバーと知り合った被爆者が亡くなる中、戦争体験を記録しなければと企画した。冊子は活動に賛同する店舗やNPO法人に置いてもらう。豊久芳光代表(47)は「戦争を知らない世代が平和について考えるきっかけになれば。若者を巻き込んだ活動にしたい」と話す。

 豊久代表Tel090(3633)1109。ホームページはhttp://turuorukai.com

待っとる間に鶴折る会・ヒロシマ
 1996年、広島市や廿日市市の団体職員や会社員で結成。飲食店などに働き掛け、客に待ち時間を使って鶴を折ってもらう。現在、会員7人。広島市などの42店が協力。折り鶴は8月6日に原爆の子の像にささげている。

(2012年7月6日朝刊掲載)

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