社説 朴政権の混乱 退陣時期の明言を急げ
16年12月5日
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が2018年2月の任期満了を待たず、職を退く意向を表明した。それでも野党側がきのう弾劾訴追案を国会に提出することを決めるなど、政治の混乱がいつ収まるのかは見通せない。
朴氏があいまいな内容にせよ辞意をようやく口にしたのは、親友の崔順実(チェ・スンシル)被告による国政介入疑惑に対する国民の怒りからは逃れることができないと判断したからだろう。
しかし、いつ大統領職を退くのかさえ明言せず、政権移譲の手続きやスケジュールを国会に丸投げしたのは、あまりにも無責任に過ぎる。
与野党がまとまるのは難しいと見越した弾劾逃れであり、罷免を避けるための時間稼ぎと批判されても仕方あるまい。
きのう予定されていた弾劾訴追案の採決が見送られた点では朴氏のもくろみ通りだろう。その上、次期大統領選に向けた思惑が交錯し、退陣時期についても与野党は一致していない。
与党セヌリ党は「来年4月末の退陣、6月大統領選」を目指す。党立て直しに加え、年末まで国連事務総長を務める潘基文(バン・キムン)氏を候補にするつもりで、準備に時間が要るのだろう。対する最大野党、共に民主党は「来年1月末退陣」を唱え、与党の準備が整わないうちに選挙に持ち込みたいとみられる。
野党側は提出した弾劾訴追案を9日の採決で可決したい考えだ。ただ可決には国会議員の3分の2以上の賛成が要る。与党内で朴氏と対立する非主流派が鍵を握るのは間違いない。彼らは朴氏が7日夕までに退陣時期を示さなければ、弾劾訴追案に賛成する方針を表明した。朴氏が意思表示をしないなら弾劾可決もあり得えよう。
この週末のデモの動向や来週予定される崔被告らの国会聴聞会を世論がどう受け止めるかで与野党のスタンスは変わるかもしれない。しかし大統領続投という選択肢は、もはやない。
これほど国民の怒りが膨らんだのは格差が大きく広がっていることに加え、財閥など特権階級が身近な人を優遇する不公平な慣習などへの不満が充満していたからだ。猛烈な受験戦争を強いられる社会で、崔被告の娘が有名大学に不正入学した疑惑は国民感情を逆なでした。
その責任を感じるなら朴氏は一日も早く退陣時期を示すべきではないか。憲法に辞任や任期短縮の規定がないからと、憲法改正を辞任の条件に持ち出している場合ではないはずだ。さらに自ら表明した通り、特別検察官の聴取を受け入れた上で疑惑の真相を国民に包み隠さず説明しなければならない。
与野党も大統領選をにらんだ党利党略を排し、事態の収拾に力を尽くすべきだ。でないと、いずれ国民の怒りの矛先は国会の方に向かいかねない。
むろん隣国の混乱は日本にとっても影響が大きい。核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応が問われる中、今月に予定されていた日中韓首脳会談の開催も危ぶまれている。昨年末の従軍慰安婦問題を巡る合意などで改善に向かい始めていた日韓の両国関係が再び不安定となる可能性もある。
日本は刻々変わる韓国の政治状況を冷静に見極め、いかなる場合でも信頼関係をより深めていけるよう努めるべきだ。
(2016年12月3日朝刊掲載)
朴氏があいまいな内容にせよ辞意をようやく口にしたのは、親友の崔順実(チェ・スンシル)被告による国政介入疑惑に対する国民の怒りからは逃れることができないと判断したからだろう。
しかし、いつ大統領職を退くのかさえ明言せず、政権移譲の手続きやスケジュールを国会に丸投げしたのは、あまりにも無責任に過ぎる。
与野党がまとまるのは難しいと見越した弾劾逃れであり、罷免を避けるための時間稼ぎと批判されても仕方あるまい。
きのう予定されていた弾劾訴追案の採決が見送られた点では朴氏のもくろみ通りだろう。その上、次期大統領選に向けた思惑が交錯し、退陣時期についても与野党は一致していない。
与党セヌリ党は「来年4月末の退陣、6月大統領選」を目指す。党立て直しに加え、年末まで国連事務総長を務める潘基文(バン・キムン)氏を候補にするつもりで、準備に時間が要るのだろう。対する最大野党、共に民主党は「来年1月末退陣」を唱え、与党の準備が整わないうちに選挙に持ち込みたいとみられる。
野党側は提出した弾劾訴追案を9日の採決で可決したい考えだ。ただ可決には国会議員の3分の2以上の賛成が要る。与党内で朴氏と対立する非主流派が鍵を握るのは間違いない。彼らは朴氏が7日夕までに退陣時期を示さなければ、弾劾訴追案に賛成する方針を表明した。朴氏が意思表示をしないなら弾劾可決もあり得えよう。
この週末のデモの動向や来週予定される崔被告らの国会聴聞会を世論がどう受け止めるかで与野党のスタンスは変わるかもしれない。しかし大統領続投という選択肢は、もはやない。
これほど国民の怒りが膨らんだのは格差が大きく広がっていることに加え、財閥など特権階級が身近な人を優遇する不公平な慣習などへの不満が充満していたからだ。猛烈な受験戦争を強いられる社会で、崔被告の娘が有名大学に不正入学した疑惑は国民感情を逆なでした。
その責任を感じるなら朴氏は一日も早く退陣時期を示すべきではないか。憲法に辞任や任期短縮の規定がないからと、憲法改正を辞任の条件に持ち出している場合ではないはずだ。さらに自ら表明した通り、特別検察官の聴取を受け入れた上で疑惑の真相を国民に包み隠さず説明しなければならない。
与野党も大統領選をにらんだ党利党略を排し、事態の収拾に力を尽くすべきだ。でないと、いずれ国民の怒りの矛先は国会の方に向かいかねない。
むろん隣国の混乱は日本にとっても影響が大きい。核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応が問われる中、今月に予定されていた日中韓首脳会談の開催も危ぶまれている。昨年末の従軍慰安婦問題を巡る合意などで改善に向かい始めていた日韓の両国関係が再び不安定となる可能性もある。
日本は刻々変わる韓国の政治状況を冷静に見極め、いかなる場合でも信頼関係をより深めていけるよう努めるべきだ。
(2016年12月3日朝刊掲載)