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社説・コラム

『書評』 郷土の本 「世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカ 日本人へ贈る言葉」 西洋化された消費文化問う

 「世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカ 日本人へ贈る言葉」が刊行された。福山市出身のフリーライター佐藤美由紀さんが、南米ウルグアイの前大統領、ホセ・ムヒカさんの名言を紹介した著書の第2弾。この春の現地取材や来日時のムヒカさんの言葉を中心に、日本人に訴えかけるメッセージをセレクトした。

 「日本は経済大国になった。技術もとても進んでいる。でも、そんな国で生きる日本人は本当に幸せなのでしょうか」。ウルグアイの自宅を訪れた著者への問い掛けだ。「日本にはあれだけ立派な伝統、文化がある」のに、「西洋化された消費文化によって埋葬されて」しまったとも。著者は、それぞれを身近な問題に引き付け、分かりやすい解説をつづっていく。

 人生には二つの選択肢があるとムヒカさん。「ひとつは、現在のマーケットにコントロールされる道。そしてもうひとつは、自分の意思で進む道」。金もうけ至上の大量消費経済に巻き込まれ、人生本来の自由を奪われてはならないという。あちこちで行き詰まりを見せつつある資本主義社会をどう生きるか、ヒントになるかもしれない。

 110ページ、1080円。双葉社。(上杉智己)

(2016年12月4日朝刊掲載)

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