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開戦75年 反省語って 首相 真珠湾訪問 被爆者注視

 開戦から75年。安倍晋三首相は5日、現職首相として初めて米・ハワイの真珠湾を訪問すると発表した。「和解の重要性を発信したい」と安倍首相。元兵士や被爆者からは「戦争を始めたことへの反省の弁を」「遅きに失した」と評価と批判の声が上がった。歴史的訪問は、日米の悲痛な歴史に区切りをつける新たな一歩となるのか。

 被爆71年のことし5月、米国の現職大統領では初めてオバマ大統領を迎え入れた被爆地広島。平和記念公園(広島市中区)で、原爆慰霊碑にオバマ大統領と安倍首相がそれぞれ献花し、碑前で「核兵器なき世界」の追求を誓った。

 その会場でオバマ大統領と言葉を交わし、いたわるように肩を抱かれた被爆者の森重昭さん(79)は5日、西区の自宅で記者団に囲まれ、安倍首相の真珠湾訪問を「素晴らしい」と歓迎した。自身は被爆米兵の調査と追悼を続けてきた。「なぜ戦争に至ったのか、両国の為政者が謙虚に反省し、世界平和に向けた願いを共有してほしい」と求めた。

 当時、会場近くまで駆け付けた広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(74)も訪問の意義を認めつつ安倍首相の言動に関心を寄せる。「戦争を始めたことへの反省の弁を述べてほしい。うやむやで終わっては今後につながらない」

 広島を訪れたオバマ大統領への「返礼」との見方もある。もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(76)は「過大評価すべきではない。広島と真珠湾の表面的な行き来にのみ焦点を当て、核兵器廃絶が進まない現状から目をそらしてはならない」と指摘する。

 市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(77)は「真珠湾攻撃と、米軍が投下した原爆による無差別大量殺害とは質が違う。両者が等価に扱われることで、原爆被害の非人道性が覆い隠されないか、懸念している」と話した。(和多正憲、長久豪佑、水川恭輔)

(2016年12月6日朝刊掲載)

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